航空機事故ゼロをめざして
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
航空機の事故調査と安全の組織的管理
航空機事故ゼロをめざして(11)事故調査の目的と役割
科学と技術
鈴木真二(東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長)
いかに事前に対策を取ろうとも、航空機事故を完全に防ぐことはできない。事故後の調査から、今後の改善策を練る必要がある。また1980年代以降、組織的な安全管理の重要性も認識されるようになってきた。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が事故調査と安全の組織的管理について解説する。(全12話中第11話)
時間:13分47秒
収録日:2017年11月27日
追加日:2018年4月9日
≪全文≫

●NTSBの事故調査方法は「パーティーシステム」


 ハザード分析によって運行に対する危険が低減されるのですが、事故は起こり得ます。事故後にはその原因を調査して、それを役立てるということが重要になってきます。

 ここではアメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)の歴史について、簡単に見てみましょう。1956年、米国のグランドキャニオン上空で2機のプロペラ旅客機が空中衝突するという、悲惨な事故がありました。

 これを受けて1958年に連邦航空局(FAA)が設立され、1967年には、航空以外の道路、鉄道、船舶、パイプラインの事故調査を行うNTSBが設置されます。設立当時のNTSBはアメリカ運輸省の一組織でしたが、1975年には独立した組織となり、中立的な立場での事故調査が可能になりました。

 事故調査の第一の目的は再発防止です。NTSBが、FBIなどの他の機関に対して優先権を持つのは、そのためです。事故調査の方法には、事故関係当事者も参加させる、「パーティーシステム」と呼ばれる独自の方法が採用されています。これは、その機体について最も詳しい知識を有するのは当事者だ、という考えに基づいています。

 調査結果はFAAなどの政府機関に対して「勧告」という形で行われます。そのため、中立性が求められるわけです。1996年からはNTSBは事故犠牲者や遺族への対応やケアも行うようになりました。


●事故報告を受けてFAAは耐空証明を改定した


 次に、日本の航空機事故調査の体制を見てみましょう。1971年に起きた全日空機雫石衝突事故を機に、1974年に運輸省の審議会等として航空事故調査委員会が設置されました。航空事故調査委員会は、2000年の日比谷線脱線事故を機に、2001年に航空・鉄道事故調査委員会へ改称され、2008年には海難審判庁を統合して運輸安全委員会となりました。組織的にも独立行政委員会となり、権限が強化されたわけです。

 こうした事故調査の役割について、実例を用いて幾つかご紹介したいと思います。1996年、ニューヨークJFK空港を離陸したTWA800便B747型機は、大西洋上空で空中分解をするという大きな事故を起こしました。当初テロやミサイルなどが疑われましたが、2000年に発表された事故調査報告書では起こり得る原因として、中央翼の燃料タンクの圧力が過大となり破壊が始まったと結論付けています。中央翼は胴体を貫通している翼です。写真は、大西洋から引き上...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
不便益システムデザインの魅力と可能性(7)不便益の意義と発想方法
「のらカフェ」は「不便益×食」から生まれたアイデア
川上浩司