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ヒューマンエラー対策と作業の信頼性を上げる条件設定

ヒューマンエラーと経営戦略(5)ヒューマンエラー対策

岡田有策
慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授
概要・テキスト
慶應義塾大学理工学部管理工学科教授の岡田有策氏が、安全対策の2つの方法について解説する。一つは、再発防止に向けたヒューマンエラー対策である。もう一つは、未然防止に向けたもので、作業の信頼性を上げる条件設定である。問題は、本社が現場の状況を把握しておらず、ヒューマンエラー対策のシステムが機能しないことだ。(全10話中第5話)
時間:09:49
収録日:2017/09/01
追加日:2018/02/17
≪全文≫

●結果論でエラーかエラーではないかが判断されている


 事故やヒューマンエラーの問題に対して、色々な企業が気にしているということで、今回はヒューマンエラーに対する考え方の根本を、整理しておこうと思います。

 スライドには「事故」、「行動」、「要因」と書かれていますが、行動が事故に関わった場合には、それは「エラー」だと言われることになります。しかし、エラーと言われているものが、最初からそう認識されていることはまれでしょう。実際には、事故が起きたからこそ、その行動がエラーだと呼ばれている場合がよくあります。事故が起きていなければ、それはエラーだと見なされていない可能性があるのです。つまり、結果論でエラーかエラーではないかが判断されているのです。


●人的信頼性は環境要因も含めて1にならない


 それゆえ、われわれ研究者はエラーという言葉を普通使わず、行動という言い方をします。専門的な研究分野でも、「エラー何とか工学」という言い方ではなく、「人的信頼性解析」や「人的信頼性を考えるための工学」といった言い方です。その際、「信頼性」という言葉からも分かるように、エラーではなく成功の確率が問題にされています。つまり、もともとの方向性としては、人の作業の成功確率を高めていく方法を研究するということなのです。人的信頼性(human reliability)を1に近づけていくためのシステム設計を行うのが、ヒューマンエラーに対する対応策であり、そこには人間工学的なことも含まれています。

 ただし、世の中的には、どうしても「安全」よりは「事故」と言った方が通りは良いですし、「人的信頼性」と言ってもピンと来ないでしょう。そこで、ヒューマンエラーと言った方が分かりやすいのではないか、ということになっています。しかし、やはり問題もあります。エラーの問題にされてしまうと、確率への考慮がなくなってしまい、単にエラーか、エラーではないかというゼロイチの話になってしまうからです。エラーを起すか起こさないか、白黒つけるということが問題になれば、エラーに対する防止ということだけがクローズアップされてしまうでしょう。

 こうした意味で、むしろ「信頼性」という枠組みが重要になります。エラーが起こりやすいか、起こりにくいかというイメージです。実際にエラーは定義できないので、行動がうまくできるか、できないかが問題な...
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