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ICAOが規定する航空機の国際ルール

航空機事故ゼロをめざして(7)ICAOの国際ルール

鈴木真二
東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長
情報・テキスト
東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、航空機に関する国際ルールについて解説する。パリ国際航空条約(1919年)から現在の国際民間航空機関(ICAO)に至るまで、領空主権や航空機の安全証明など、航空機のライフサイクルに応じた様々な国際ルールが取り決められてきた。(全12話中第7話)
時間:08:12
収録日:2017/11/27
追加日:2018/04/05
キーワード:
≪全文≫

●航空機の国際的な利用は、第1次世界大戦終了後に広まった


 「航空機事故ゼロをめざして」というタイトルでお話してきました。今回からは、「航空安全向上に向けて」という内容になります。東京大学大学院工学系研究科・航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二です。

 航空機の国際的な利用は、第1次世界大戦終了後に広まりました。当時問題となったのは、領空主権の考え方です。つまり、その空は誰のものかということが問題となり、また領空主権に関する国ごとの規則の差異も課題となりました。

 1919年にパリ国際航空条約が締結されます。この条約には日本を含む26カ国が署名し、その後11カ国が批准、1922年に条約が発効されました。その中で、それぞれの国は自国の領土と領海の上空に主権を持つという領空主権の考え方が採用されたわけです。パリ国際航空条約では、次のことに関して取り決められました。すなわち、航空機の国籍、飛行機が安全であるということを証明する耐空・性能証明、外国領土の上空飛行許可、また出発・飛行中・着陸時に順守されるべき規則、国有機、国際航空委員会の設置などです。

 耐空証明とは、航空機の強度・構造・性能が、安全性および環境保全のための技術上の基準に適合するかどうかを検査し、その基準に適合していると認める証明です。基本的には、今日の全ての航空機にも、この耐空証明が必要となります。


●戦後、国連の専門機関、国際民間航空機関(ICAO)が発足する


 ただし、この条約にはあまり多くの国が参加しなかったということがあり、実際に有効な国際条約ができるのは第2次世界大戦後になってからでした。さらに本格的な国際民間航空に向けて、第2次世界大戦終結前の1944年に、シカゴで民間航空に関する国際会議が開催され、国際民間航空条約、いわゆるシカゴ条約が採択されました。ここでは領空主権が再び確認され、国際民間航空を効率的に安全に行うことを目的に、より多くの国が参加したわけです。

 戦後になると、国連の専門機関である国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization, ICAO)も、1947年に発足します。本部はカナダのモントリオールにあります。190カ国が加盟しており、日本も1953年に加盟しました。

 ICAOシカゴ条約にはANNEXと呼ばれる付属書があり、そこでさまざまな国際航空に関するルールが決められています。これを批准した各国は、国内の法律にそのルールを反映させなくてはなりません。


●航空機のライフサイクルに合わせて様々な規定が必要になる


 ANNEXは19あります。Annex1は、航空に従事する者の技能証明です。パイロットはパイロットのライセンス、整備士は整備士のライセンス、管制官は管制官のライセンスが必要になるということを規定しています。Annex2は航空の規則、Annex3は気象サービス、Annex4は航空図について書かれています。航空図とは、パイロットが飛行機を操縦する際に頼りにする地図のことです。

 Annex5は運航で使用される計測単位を統一したものです。国によって単位が異なっては混乱しますので、これを統一しておかなくてはなりません。Annex6は航空機の運航に関するものです。Annex7は航空機の国籍及び登録記号を定めています。飛行機には番号が付けられており、これを見ただけで、どの国の飛行機か、どのように登録されているかということが分かるわけです。国際ナンバープレートのようなものだと思ってください。

 Annex8は航空機の耐空性に関するものです。これが先程述べた、航空機が安全かを保証するものになります。Annex9は出入国の簡易化、Annex10は航空通信、Annex11は航空交通業務、いわゆる航空管制業務です。Annex12は、捜索救難業務です。飛行機が飛行中に行方不明になった場合、どのように対処するのかということが決められています。

 Annex13は、航空機事故調査です。飛行機は事故を免れません。事故の原因を調査し、改善に結び付けるための調査方法が規定されています。Annex14は飛行場に関するもの、Annex15は航空情報業務です。これはさまざまな情報を航空機に提供するというものです。Annex16は環境保護、例えば騒音や排出ガスの問題について規定されています。Annex17はいわゆるセキュリティーで、Annex18は危険物の安全輸送、そして最後のAnnex19は航空安全システムを規定しています。

 こうした多くの規定が、航空機のライフサイクルに合わせて必要になります。航空機が設計・開発され、製造され、それが国に登録され、そして運航され、整備を繰り返しながら使っていくというライフサイクルです。さらに、飛行機を離発着させるための空港業務や、事故が起きた場合の調査をどのように行うのかということに関しても、様々な国際的なルールが必要になるのです。
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