航空機事故ゼロをめざして
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
システムの信頼性を維持するには冗長設計が不可欠
航空機事故ゼロをめざして(5)ルッサーの法則
鈴木真二(東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長)
2000年のアラスカ航空261便墜落事故は、水平安定板のスクリューに潤滑油が塗られていなかったという些細な原因によって引き起こされた。システム全体の信頼性は、個々の要素の信頼性の積み重ねに支配されている。ルッサーの法則と冗長設計の必要性について、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が解説する。(第5話)
時間:7分22秒
収録日:2017年10月30日
追加日:2018年2月6日
≪全文≫

●一つの部品の不具合によって、大きな事故が発生しうる


 最近では、複雑化するシステムの安全をどのように確保するのかということも、大きなテーマです。デンゼル・ワシントン氏が主演したハリウッド映画『フライト』は、ある事故をモデルにした映画です。航空機の水平尾翼には「昇降舵」と呼ばれるかじが付いています。映画では、飛行中に昇降舵が操縦不能になり、真っ逆さまに機体が降下していきます。しかし、パイロットの機転で機体を反転させて水平飛行に戻し、さらに元へ戻して胴体着陸に成功するというストーリーです。映画にはモデルがあり、2000年に発生したアラスカ航空261便の墜落事故が参考になっているといわれています。

 メキシコ発の機体はサンフランシスコに向かう途中、水平安定板が固着してしまいます。機体は降下を開始し、ロールしながら宙返りを打って飛行していきました。映画とは違って、実際には姿勢を取り戻すことができず、制御不能のまま太平洋に墜落したのです。乗員5名と乗客83名の合計88名が犠牲になりました。

 この事故の原因は何だったのでしょうか。機体には、電動モーターで水平安定板を動かす仕組みが取り入れられていました。事故の原因を調査した結果、水平安定版を動かすスクリューに潤滑油が塗られていなかったということが判明しました。水平安定板の作動装置は、バックアップのないクリティカルな部品です。本来は、点検整備を完璧に行うことが要求されます。ところが現実には、点検時に指示されていたはずの潤滑油が存在しなかったということになります。

 つまり、こうした一つの要素、一つの部品の不具合によって、大きな事故が発生し得るのです。ここには巨大で複雑なシステムの信頼性をいかに管理するのかという課題が潜んでいます。


●システムの信頼性は個々の要素の信頼度の積み重ねに支配される


 航空機のようにたくさんの部品が組み合わさって使われる場合、そのトータルなシステムの信頼性を管理することが非常に重要です。そこには、「ルッサーの法則」が適用されます。ドイツの航空技術者であったロベルト・ルッサーは、戦後アメリカに移り、ミサイル等の信頼性解析に従事します。そこで、トータルなシステムの信頼性は、個々の要素の信頼度の積み重ねによって支配されているとして、次のような法則を導いたのです。

 例えば、一つの部品が90パーセ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
発酵はマジックだ!
色を消し、脂を溶かし、水を分解―スゴすぎる発酵の力!
小泉武夫
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(38)アメリカ中間選挙と民主主義
【10min解説】第2期のトランプ大統領と中間選挙を考える
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(4)アレクサンドル・ネフスキーの英雄化
ロシアの英雄「アレクサンドル・ネフスキー」はなぜ英雄か…ドイツ騎士団と戦った歴史がどう利用されたか
上月豊久
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(8)『オデュッセイア』の世界的影響
オデュッセイアが物語のフォーマット?…アラビアンナイトから百合若物語、ひまわりまで
松村一男
今後の技術革新と企業経営(6)仮想通貨とフィンテック
仮想通貨が本当の「通貨」にならない理由
柳川範之
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(4)郡家の発掘と新田山を詠んだ東歌
「東歌」に刻印された奈良時代の真実とは?…地方に気をつかい地方のパワーを取り込んで中央政権はできていた
上野誠