航空機事故ゼロをめざして
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製造・運航における航空機の安全対策
航空機事故ゼロをめざして(10)製造・運航時の安全確保
科学と技術
鈴木真二(東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター特任教授/福島ロボットテストフィールド所長)
航空機は製造・運航において、どのような安全対策が取られているのだろうか。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授の鈴木真二氏が、製造工程での各種の規格から、運航時の安全性を高めるハザード解析に至るまで、航空機の製造・運航段階の安全確保について解説する。(全12話中第9話)
時間:11分38秒
収録日:2017年11月27日
追加日:2018年4月8日
≪全文≫

●航空機の製造工程にはさまざまな規格が要求される


 次に、製造における安全性の確認についてお話しします。航空機の場合には、製造工程においても各種の規格が要求されます。さまざまな規格が用いられていますが、代表的なものの一つはデジュール標準です。これはISOのような公的な機関によって規定された規格です。品質保証規格としてはISO9001があり、これを航空宇宙分野に適用したものがJISQ9100という規格です。

 また、こうした国際的な公的機関まではいかなくても、関心のある企業が集まったフォーラムが規格を規定している場合もあります。フォーラム標準と呼ばれています。例えば航空の分野では、特殊工程の認証を行うNadcap、アメリカの材料試験協会による材料の規格ASTM、そしてオートモーティブ技術者協会(Society of Automotive Engineers、SAE)の規格があります。

 また、企業で使われている規格が市場で支配的になるという、デファクト標準と呼ばれるものも存在します。他にも、企業内だけで使われている企業標準、また、日本の場合は航空機製造事業法などに該当する国内法など、さまざまな規格が標準として用いられています。


●ハザードは潜在的な危険の源を意味する


 運航における安全確保はどうなっているでしょうか。まずは航空機のライフサイクルのスライドをご覧ください。

 製造された機体は、国の当局より型式証明を取得します。これは、その飛行機が安全であることを製造国政府が認めるものです。機体を運航する前には、国に登録しなければなりません。

 また、運航する際には毎年、耐空証明という自動車の車検に相当する検査が必要になります。毎日の整備や、数年ごとの大きな整備もエアラインの中で行われます。空港に離発着し飛行する際には、航空交通管理を受けます。運航していく間に、事故も発生するでしょう。事故調査を行い、その原因を究明して改善につなげるということです。

 運航における安全の考え方で重要になるのが、ハザード解析です。ここでは「蝶ネクタイ法」と呼ばれている手法を使って、ハザード解析の概要を説明します。

 ハザードは潜在的な危険の源を意味します。ハザードが大きな損傷につながる場合、ハザードを引き起こすトリガーとして脅威が必ず存在します。したがって、どのようなハザードが存在し、それがどのような脅威によって損傷につな...

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