ヒューマンエラーと経営戦略
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リスクを許容しなければリスクマネジメントは不可能
ヒューマンエラーと経営戦略(6)未然防止とリスクの許容
経営ビジネス
岡田有策(慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授)
慶應義塾大学理工学部管理工学科教授の岡田有策氏が、事故の分析で日本企業が陥りやすい誤謬について解説する。事故の分析といえば、すぐにレアファクターばかりが検証されるが、未然防止にとって重要な事は、普段の状態、すなわち定常作業の分析である。リスクを許容しなければ、リスクアセットもマネジメントも不可能だ。(全10話中第6話)
時間:9分14秒
収録日:2017年9月1日
追加日:2018年2月18日
≪全文≫

●レアファクターばかり分析する傾向が強い


 要因をしっかり見て分析し、対策を取るということは、安全に関わる問題だけでなく、色々な形で世の中の改善を考える場合に、必ず行われるものです。要因分析をする場合には、定常作業と非定常作業を区別しなくてはなりません。定常作業が事故の起きていない場合、非定常作業が事故の起きた場合です。

 さて、事故の分析をするためには、本来ならば、スライドにあるようにコンスタントファクターからレアファクターまで、まんべんなく出すことが必要です。しかし、レアファクターばかり分析する傾向が大変強くなっています。目に付きやすいからでしょう。

 例えば、今、100ミリリットルしか入らないコップが2つあるとします。Aのコップには60ミリリットル、Bのコップには80ミリリットルの水が入っています。雨が降ってきて、両方のコップに30ミリリットル入ってしまいました。Aのコップは90ミリリットルで我慢できました。Bは110ミリリットルになって、10ミリリットルこぼれました。

 Bのコップの持ち主は、得てして、降雨量の30ミリリットルを分析したがります。もし降雨量が20ミリリットル以下であれば、こぼれなかっただろうというわけです。30ミリリットルを、どうにかして20ミリリットル以下にできないかと考えてしまうのです。これが、ここでいうレアファクターです。あるいは、雨が降っていて滑ってしまった場合、普段の歩き方を考えるのではなく、雨でも大丈夫な靴や傘、通路はどうすればいいのかと考えてしまうのが、レアファクターです。

 このように、人間は要因分析をする場合に、事故のときだけのものを扱いたくなってしまうのです。事故の要因さえ排除すれば、事故は起こらないだろうと、こうしたロジックを組んでしまいます。確かに間違ってはいないことですが、しかし本当は、コップの例でいえば、80ミリリットル入っていたものを60ミリリットルにしておけば、雨が降っても水がこぼれなかったはずなのです。


●未然防止で大事なことは定常作業だ


 したがって、未然防止で大事なことは、定常作業の段階、つまり普段の事柄なのです。未然防止とは、将来起こり得る事故を想像して対策を取ることではありません。普段のコップの水を減らしておくことが、未然防止なのです。

 ところが、未然防止というと、あたかも超能力のように、将来起こり得る事...

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