ヒューマンエラーと経営戦略
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
安全・安心というブランドは企業の大きな付加価値となる
ヒューマンエラーと経営戦略(2)安心ブランドの獲得
岡田有策(慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授)
慶應義塾大学理工学部管理工学科教授の岡田有策氏は、安全対策を成長戦略の一環として捉えるべきだと主張する。目先のエラーや事故を防ぐことに終始するのではなく、その先にあるお客さまや地域社会から評価されることを目指した、安全への取り組みが不可欠だ。安全・安心というブランドを得れば、企業の大きな付加価値となる。(全10話中第2話)
時間:16分29秒
収録日:2017年9月1日
追加日:2018年1月23日
≪全文≫

●エラーを定義することはできない


 この点をヒューマンエラーということに広げて考えると、2の「いい仕事をしていく」ことにつながってきます。エラーについて考えていくと、安全と同じように、エラーを定義することはできません。例えば、ルールを破ったことがエラーだとすれば、間違ったルールを正す行為もエラーになってしまうでしょう。

 あるいは、意図的にではなく間違うことがエラーだとする見方もありますが、これも意見が分かれます。例えば、人を殺したという場合にも、殺人と過失致死があります。過失は意図がないもので、殺人は意図があるものです。過失致死は意図がないのだからエラーだとすれば、それでも人を殺していることに変わりはないと、違和感を持つ人が出てきます。

 他方で、殺人のように意図があったものをエラーだとすることに、違和感を持つ人もいるでしょう。というのも、殺人というのはそもそもの意図が間違っているからです。意図を生み出すのは、判断です。もともとの判断にミスがあった場合、これは意図が間違っていたということです。だとすれば、殺人をエラーだと捉えることは難しくなります。

 実際の現場でも、事故が起こっているからエラーだと決めているのがほとんどであって、事故がないとエラーだと決めることは難しくなるでしょう。エラーという言葉を使うのは簡単ですが、エラーを分析して、その対策を打つということは非常に難しいのです。

 最近のはやりですから、すぐにエラーやミス、人為的過誤といった言葉が使われます。しかし、個別の行為をエラーだと見て、それを防ぐことはできますが、一般的にエラーを防ぐということは、エラーの定義ができない以上、実は難しいのです。


●目的はエラーを減らすことではなく、仕事の質を上げることだ


 それでは、どのように考えていけばいいのでしょうか。重要なことは、エラーか、エラーではないかということではありません。むしろ、その行動や仕事を評価していくということが必要なのです。

 単純にミスやエラーを減らしたいだけであれば、何もしないことが一番です。打席に立たなければ三振はしません。仕事をしなければミスは起こりません。手術をしなければ手術ミスは起こりません。運転しなければ運転ミスは起こりません。当たり前のことです。しかし、こうした「正解」を、ほとんどの人たちは聞きたいわけで...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
億万長者への道(1)お米屋さんから不動産業界へ
「背広を着てビジネスがしたい」との思いから宅建取得
高橋誠一
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄