ヒューマンエラーと経営戦略
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安全・安心というブランドは企業の大きな付加価値となる
ヒューマンエラーと経営戦略(2)安心ブランドの獲得
経営ビジネス
岡田有策(慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授)
慶應義塾大学理工学部管理工学科教授の岡田有策氏は、安全対策を成長戦略の一環として捉えるべきだと主張する。目先のエラーや事故を防ぐことに終始するのではなく、その先にあるお客さまや地域社会から評価されることを目指した、安全への取り組みが不可欠だ。安全・安心というブランドを得れば、企業の大きな付加価値となる。(全10話中第2話)
時間:16分29秒
収録日:2017年9月1日
追加日:2018年1月23日
≪全文≫

●エラーを定義することはできない


 この点をヒューマンエラーということに広げて考えると、2の「いい仕事をしていく」ことにつながってきます。エラーについて考えていくと、安全と同じように、エラーを定義することはできません。例えば、ルールを破ったことがエラーだとすれば、間違ったルールを正す行為もエラーになってしまうでしょう。

 あるいは、意図的にではなく間違うことがエラーだとする見方もありますが、これも意見が分かれます。例えば、人を殺したという場合にも、殺人と過失致死があります。過失は意図がないもので、殺人は意図があるものです。過失致死は意図がないのだからエラーだとすれば、それでも人を殺していることに変わりはないと、違和感を持つ人が出てきます。

 他方で、殺人のように意図があったものをエラーだとすることに、違和感を持つ人もいるでしょう。というのも、殺人というのはそもそもの意図が間違っているからです。意図を生み出すのは、判断です。もともとの判断にミスがあった場合、これは意図が間違っていたということです。だとすれば、殺人をエラーだと捉えることは難しくなります。

 実際の現場でも、事故が起こっているからエラーだと決めているのがほとんどであって、事故がないとエラーだと決めることは難しくなるでしょう。エラーという言葉を使うのは簡単ですが、エラーを分析して、その対策を打つということは非常に難しいのです。

 最近のはやりですから、すぐにエラーやミス、人為的過誤といった言葉が使われます。しかし、個別の行為をエラーだと見て、それを防ぐことはできますが、一般的にエラーを防ぐということは、エラーの定義ができない以上、実は難しいのです。


●目的はエラーを減らすことではなく、仕事の質を上げることだ


 それでは、どのように考えていけばいいのでしょうか。重要なことは、エラーか、エラーではないかということではありません。むしろ、その行動や仕事を評価していくということが必要なのです。

 単純にミスやエラーを減らしたいだけであれば、何もしないことが一番です。打席に立たなければ三振はしません。仕事をしなければミスは起こりません。手術をしなければ手術ミスは起こりません。運転しなければ運転ミスは起こりません。当たり前のことです。しかし、こうした「正解」を、ほとんどの人たちは聞きたいわけで...

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