●心理的に安全なチーム風土をつくるための「4つのポイント」
では、「心理的に安全なチームをつくるコツ」について、主に心理学の観点からお伝えしていきたいと思います。
1点目は「透明性」です。これからの時代はより不確実で不透明になっていきますが、脳科学的にみても人は不透明なことに恐れを感じるといわれています。特に日本人は、昔のホフステードの研究にある通り、不確実性を回避しやすい傾向があるといわれます。ですから、チームづくりをするときにはぜひ「透明性」を心がけたい。リーダーとしての先行きの透明性もそうですし、情報の透明性を担保しながら発言に対する不安を低減していくところが非常に重要かと思います。
最近はリモートワークが増えたため、昔のオフィスワークのように隣の人の雑談が見て取れない状況になってしまいました。その点では対人不安を非常に増殖しやすい環境にあるといえるでしょう。そこで、われわれが推奨しているのは、リモートワークを推進するいろいろなツールの利用です。「Talknote」など情報開示のできるツールがいろいろありますから、そうしたものを活用しながら透明性を担保できるチームづくりを進めていくことをお薦めしたいと思います。
透明性が担保できた上で、2点目に挙げるのは「尊重」です。人間は自分と他者を比較したときに、自分が尊重されていないと感じると、非常に強い恐れを感じる傾向があるといわれています。ここで大事なのが「尊重」で、ダイバーシティやインクルージョンにつながってくるところです。相手をきちんと個人として尊重していくことが、非常に大切だと考えています。
例えばリーダーの方々もメンバーの方々も、少し厳しい組織にいくと、「その方の能力があるから認められる」「その方の専門性があるから認められる」「その方がその地位にいるから認められる」ということになってきます。つまり、その方が持っている何かを尊重したり承認したりすることが多くなってくると思いますが、まずここでお伝えしたいのは、その方を「存在」として承認しているというところです。ここにフォーカスを当て、チームにいることを承認していくことが非常に大事なので、その方の人間性としてその方がいることを尊重していくことが非常に大切だと思います。
3点目が「主体性」です。もちろん「尊重」ができた上での主体性だろうと思いますが、人は生まれ持って「主体性」もしくは「自律性」のある生き物だと考えられます。
私には子どもが3人いますが、今ちょうど3歳になったばかりの子は、1年ぐらい前からなんでもしてもらうところから自分でなんでもやりたい時期が続いています。親がボタンをつけてあげても自分でボタンをはめたいし、靴を履かせようとしても自分で履きたい。そのような主体性は、人間に生まれながらに備わっているものなのだろうと思います。それを持ったわれわれが大人になって主体性がなくなるわけではないので、本人や部下もしくはメンバー一人ひとりが主体的であることは、非常に大事なところではないかと思います。
主体性と心理的安全性には相互作用があって、どちらが先でどちらが後か、ということは実はちゃんと解明できていないのではないかと思いますが、主体性のないところに心理的安全性はつくられません。よって、ぜひ部下もしくはメンバーの主体性をいかに担保できるのかといったところを意識していただけると有難いと思います。
4点目が「公平性」です。「公平性」と「平等」の両方があると思いますが、人は人間として不公平に扱われるととても嫌気が差してしまうことは、心理学的にも指摘されています。
心理的安全性の概念は、他者がいなければ必要のない概念なので、他人と比較したり、他人にどう思われるかを考えたりするところから始まります。ですから、不公平に扱われると、とたんに別のタスクに走ってしまう。例えば、自分の優秀性をアピールするために時間を使ったり、自分の競争相手を貶めたり、陥れたりする行動に注力したりしてしまいます。そのような不必要なところに自分の焦点が行ってしまうようなことがないようにするには、機会や発言、承認、尊重の平等性は非常に大事ではないかと思います。
リモートワークが非常に多い現在、承認や理解を示す機会も減っているので、部下やメンバー同士が意図的に機会をつくり、互いの承認を示すようにすることが非常に大事なのではないかと思います。
●高業績チームの調査から得られた「6つのポイント」
では、われわれの研究の中から簡単にそのコツを伝えたいと思います。
1点目は「メンバーとのコミュニケーションの頻度を見直す」ことです。このような時代...