天皇のあり方と近代日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
小泉信三は「近視眼的」だった…多様性の時代の困難さ
天皇のあり方と近代日本(3)価値観多様化の壁
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
戦後の皇太子教育を担った小泉信三は、「戦後民主主義的な世の中が永続していく」というイメージのなかでイギリス王室に範をとった。だが、現在までの数十年間に起こったのは価値観の多様化であり、それに前後するブルジョア市民道徳の崩壊であった。「何が正しいか」さえ多様化した時代に、はたして「オープンにして敬愛される皇室像」は成立しうるのか。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分18秒
収録日:2021年11月2日
追加日:2021年12月30日
≪全文≫

●小泉信三は、やっぱり「近視眼的」だった


―― 前回の片山先生の問題提起のなかで、「皇族の少なさ」に関してはまさにこれから、旧宮家の復帰等々を含めて、いろいろな方策が考えられていかなければいけないだろうと思います。

 もう一つ、今のお話をうかがいながら理念的に非常に難しいかと思ったのが、「国民との『信頼』や『敬愛』に基づいて」というところです。何というのでしょうか、社会において、「おおむねこれが望ましい」「道徳としては、これが正しい」「あるべき結婚は、こういうもの」ということが広く共有されている時代であれば、その姿を、「これが自由だ」「自由恋愛のすばらしさだ」と貫かれればいいのだと思うのですが、さらに最近ではいろいろ価値観が多様化してまいりました。

 それこそ象徴的にいえば、LGBTの話などでは「もっと認めるべきだ」と強力にいう方もいらっしゃいますし、「いや、どうなの?」という方もありと、かなり分かれてしまいます。これは一概にどちらが正しいというのも難しいところがある時代ですね。

 「どちらが正義か」「どちらが普通か」とは、もういえない時代になってきているなかで、「では、皇室がどういうことをやると敬愛されるのですか」「どういうことをやると尊敬されるか」ということは、皇室の側に立ったとしても相当難しい時代になりつつあるのではないかと思うのですが、ここはどう思われますか。

片山 まさにその通りだと思います。ちょっと古めかしい言い方になりますが、中産階級的、ブルジョア市民道徳のようなものが(薄れてきました)。

 私は戦後の高度成長期の中産階級の家の出身ですが、父親や母親が「これはやっちゃ駄目よ」「いくら自由恋愛だからといったって、こういうことは一応……」のようなことをいいました。それはいわゆる明治的・儒教的な道徳とは全然違うのだけれども。もっと近代的な、かといって極端な個人主義ではない。

 家族があって、結婚するにしても相手の家、きょうだいや親御さんがいるところに挨拶へ行って、「仲良くやりましょう」という。そのようなレベルでの道徳というものは、戦後何十年かは、「これからずっと続いていく道徳」として考えられていました。近代の世界、とくに欧米の色々な映画とか小説とかドラマとかお芝居に描かれてきたような家庭というものが、新しい規範になりました。

 たとえば、戦...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(1)古代の持つ意義と重み
一神教もアルファベットも貨幣も全て古代に生まれた
本村凌二
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
植田和男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将