天皇のあり方と近代日本
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福澤諭吉が「帝室論」で「皇室は万年の春たれ」と説く理由
天皇のあり方と近代日本(5)福澤諭吉の「帝室論」
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
明治維新の後、帝国憲法が発布され国会が開設されようとするときに福澤諭吉が書いたのが「帝室論」である。天皇を、議会政治にまみれる存在にしてはならない。政治からは超然として、たとえ議会の与野党が火のごとく争っていても、「皇室は独り、万年の春」のようでなければならない。そして皇室が、日本の文化・伝統を守る存在となれば、国民は自ずと敬愛・尊敬するだろう。そのためには、しっかりとした皇室財産が必要だ。そう福澤は考えたのである。明治期には、やや棚上げされた福澤の議論だが、現在、非常に学ぶところが多いのではないか。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分36秒
収録日:2021年11月2日
追加日:2022年1月13日
≪全文≫

●皇室は、議会政治から超然として「万年の春」であるべきだ


―― 前回の先生のお話を受けて、ここでさらに時代をさかのぼるとすると、一つ議論に挙げたいのが、福澤諭吉の「帝室論」です。明治期の帝国憲法ができて国会が開設されるときに、帝室(現・皇室)のあり方を書いたものですが、ちょうど今まで議論をしてきたようなことが非常に簡潔にまとめられている気がします。

 福澤諭吉がいっているのは、「これから議会というものができますが、そうなると、そこでいろいろ対立が起き、争論をするのです。しかも議会などというものが作るのは法律くらいであって、倫理的なものを訴えたり、道徳を示したり、あるいは叙勲(勲章を授けること)したりするような価値もないところです」ということです。

 「だから、帝室(皇室)というものはそこから超然としていなければならない。議論、いわゆる社会的な騒乱や二つに分かれた対立からは違うところにあって、逆に国民の統合を支えるような存在でなければいけない。軍隊だって議会のためには死ねないはずで、陛下の命令だから動くのがむしろ普通の姿であるはずだ」ということが書いてあります。

 「議会がどんなに争っていても、皇室はあたかも春の風のように駘蕩(たいとう)としているような姿でなければ、国というものはまとまらない」という問題提起をしているかと思われます。

 この時期にこういうものが出てきたことの意味を、片山先生はどのようにお考えですか。

片山 福澤は最初から、天皇というものを民主主義的で議会中心の政治体制とは切り離して考えようといっています。

 美濃部達吉の「天皇機関説」にも通じていきますが、要するに議会というものが国家の意志を決める。それは国民の代表が決めるのである。だから、議会を開設し、衆議院をつくるべきだ。日本が二院制になるにしてもやはり衆議院が重いという考え方です。福澤は英米の議会主義を学んで、そういう考え方を持っていました。

 ということは、議会において国家の意志が決まるが、それが一枚岩で決まることはありえない。要するに、与党と野党がいて、それらは選挙のたびに入れ替わろうとして、必要以上にお互いを憎しみあい、罵り合う。そして、自分たちの政治的な意見(政見)を通そうとして、お金や脅迫など、非常にとんでもないこともたくさんやるのが政治というものである。議会制...

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