天皇のあり方と近代日本
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
福澤諭吉が「帝室論」で「皇室は万年の春たれ」と説く理由
天皇のあり方と近代日本(5)福澤諭吉の「帝室論」
片山杜秀(慶應義塾大学法学部教授/音楽評論家)
明治維新の後、帝国憲法が発布され国会が開設されようとするときに福澤諭吉が書いたのが「帝室論」である。天皇を、議会政治にまみれる存在にしてはならない。政治からは超然として、たとえ議会の与野党が火のごとく争っていても、「皇室は独り、万年の春」のようでなければならない。そして皇室が、日本の文化・伝統を守る存在となれば、国民は自ずと敬愛・尊敬するだろう。そのためには、しっかりとした皇室財産が必要だ。そう福澤は考えたのである。明治期には、やや棚上げされた福澤の議論だが、現在、非常に学ぶところが多いのではないか。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分36秒
収録日:2021年11月2日
追加日:2022年1月13日
≪全文≫

●皇室は、議会政治から超然として「万年の春」であるべきだ


―― 前回の先生のお話を受けて、ここでさらに時代をさかのぼるとすると、一つ議論に挙げたいのが、福澤諭吉の「帝室論」です。明治期の帝国憲法ができて国会が開設されるときに、帝室(現・皇室)のあり方を書いたものですが、ちょうど今まで議論をしてきたようなことが非常に簡潔にまとめられている気がします。

 福澤諭吉がいっているのは、「これから議会というものができますが、そうなると、そこでいろいろ対立が起き、争論をするのです。しかも議会などというものが作るのは法律くらいであって、倫理的なものを訴えたり、道徳を示したり、あるいは叙勲(勲章を授けること)したりするような価値もないところです」ということです。

 「だから、帝室(皇室)というものはそこから超然としていなければならない。議論、いわゆる社会的な騒乱や二つに分かれた対立からは違うところにあって、逆に国民の統合を支えるような存在でなければいけない。軍隊だって議会のためには死ねないはずで、陛下の命令だから動くのがむしろ普通の姿であるはずだ」ということが書いてあります。

 「議会がどんなに争っていても、皇室はあたかも春の風のように駘蕩(たいとう)としているような姿でなければ、国というものはまとまらない」という問題提起をしているかと思われます。

 この時期にこういうものが出てきたことの意味を、片山先生はどのようにお考えですか。

片山 福澤は最初から、天皇というものを民主主義的で議会中心の政治体制とは切り離して考えようといっています。

 美濃部達吉の「天皇機関説」にも通じていきますが、要するに議会というものが国家の意志を決める。それは国民の代表が決めるのである。だから、議会を開設し、衆議院をつくるべきだ。日本が二院制になるにしてもやはり衆議院が重いという考え方です。福澤は英米の議会主義を学んで、そういう考え方を持っていました。

 ということは、議会において国家の意志が決まるが、それが一枚岩で決まることはありえない。要するに、与党と野党がいて、それらは選挙のたびに入れ替わろうとして、必要以上にお互いを憎しみあい、罵り合う。そして、自分たちの政治的な意見(政見)を通そうとして、お金や脅迫など、非常にとんでもないこともたくさんやるのが政治というものである。議会制...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純
徳川将軍と江戸幕府~徳川家斉(1)家斉が長期政権を維持できた理由
11代将軍・徳川家斉が50年もの長期政権を築けた理由
山内昌之
ローマ史と江戸史で読み解く国家の盛衰(1)父祖の遺風
なぜ「父祖の遺風」がローマと江戸に共通する価値観なのか
本村凌二
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析
史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀