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鍵は“失敗”にあり。ひらめく人とひらめかない人の違い

認知バイアス~その仕組みと可能性(4)創造のバイアス〈後編〉

鈴木宏昭
青山学院大学 教育人間科学部教育学科 教授/博士(教育学)
情報・テキスト
ひらめく人とひらめかない人の違いはどこにあるのか。ひらめきの個人差を実験で検証している今回。その結果、ひらめきには失敗がとても大事であることが分かった。後半では創造におけるキーワードでもある「イノベーション」について考察する。(全7話中第4話)
時間:11:27
収録日:2022/05/26
追加日:2022/11/01
ジャンル:
≪全文≫

●ひらめきの個人差を生むポイントは見る目と多様性


 次に、皆さん興味があると思いますので、ひらめきの個人差ということについて、何がひらめく人とひらめかない人を区別しているのか、その両者の違いはどこにあるのかということについて行った研究をご紹介したいと思います。

 ここでは、またTパズルなのですが、ちょっと変わった形の実験をやりました。始めにTパズルを解いてもらいます。普通だと(終わりの)15分までそのままずっと解かせるのですが、(今回の実験では)実は5分経過した時点で評価課題というものを用意して、それを見てもらいます。タイプはこの(スライドにある)4通りあります。細かいお話はしませんけれども、筋のいいものがあり、それはスライドの右下の写真のもので、(それがヒントとなり)もうちょっとで解決に至るという置き方、組み合わせ方なのです。左上のものは最もダメで、みんなよくこういう形を作るのですが、ここで苦悩します。そこで、これらのものがどれほど解決に役立つかということを10段階で評価してもらいます。この後にまたパズルを解くのを再開し、10分で終了ということにしました。

 もちろん、解けた人と解けない人がいるわけですが、ただ、途中でこういういいものを見せたりしているので、解ける人は普通よりも多くなりました。では結果のほうに進みます。

 そうすると、できる人とできない人で区別してみたら、次のような違いがあるのです。スライドの左側の形や右上の形はダメなのですが、この3つに関しては、できる人もできない人もそれほど差がありません。しかし、右下のいい配置を見たときの反応が大きく違います。できない人は別に他とあまり変わらない評定値で、3.6となっています。一方、できる人は5.5をつけています。左側の形に対して、できる人はおおむね2の評定ですから、その2倍以上の点数をつけているということになるわけです。

 ですので、この人たち(右下の形に反応した人たち)はいいものを見たときに、「あ、これはいけるかも」というようなことが分かる。一方、できない人たちはそういうものを見てもピンと来ない。つまり、見える目が違う、評価眼が違うということです。

 それからもう1つ。(この実験でいえることとして)多様性が高いということがあります。これはちょっとややこしいグラフなのですが、縦軸(Y軸)は先ほどと同じで、筋のいい置き方の比率のようなものです。筋のいい置き方が多いということはいろいろなパターンを試しているということになります。横軸(X軸)のほうがもうちょっとややこしいのですが、左側が置き方、右側は2つのピースの接続の仕方です。これは、筋のいいものがどれくらいあったのかを示したものです。そして、四角(□)が両端にあるのができた人です。バツ(×)が両端にあるのはできなかった人のことです。

 見ていただくとすぐに分かると思うのですが、評定前の最初の5分間でできなかった人(×)は、要するに筋のいい置き方として(ほとんど)固定した置き方しかしていないので、評定前の値が非常に低い。一方で、できた人はその2倍以上で、いろいろなパターンを試しているということがこのグラフから分かると思います。

 そして、評定課題を与えた後、その中にはいいものが含まれていますので、当然、配置のバラエティや多様性は高まります。いい置き方につながる置き方が増えてくるはずです。グラフを見てみると、できた人は順調に伸びているわけです。いいヒントを得て、グッと伸びています。しかし、下のバツ(×)のグラフのほうを見てみると、ほとんど変わりません。ほんのちょっとしか伸びていないというようなことが起きている。つまり、多様性が高まらないわけです。

 こうしたことが、ひらめく人とひらめかない人を区別しているのではないかということです。


●ひらめきには失敗がとても大事


 結局ひらめきというのは、思い込み、(前回)「制約」といいましたが、失敗を重ねて少しずつ制約を緩和することによって生み出されるということです。そして、制約の緩和というのは無意識的な学習のメカニズムによって行われています。その無意識的な学習のメカニズムが働くためには、失敗がとても大事です。だから、失敗しているときに、まったくダメで投げ出したくなるかもしれないけれども、そこを続けていくことがひらめきには実はとても大事なのです。

 もう1つ。ひらめく人とひらめかない人の違いは何かというと、(ひらめく人は)見る目が良い(評価が適切)ということです。それから、多様性が高いということです。

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