クーデターを成功させるためには、鎮圧側との攻防を制しなければならない。ではそれはどのように実現できるのだろうか。そこには、単に正面から抵抗するのではないさまざまな戦略があり得る。台湾でのクーデターを想定し、具体的な手段と、その鍵を握る中国とアメリカの動きについて考える。(全6話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
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●鎮圧側の人間を取り込むという戦略
上杉 皆さんにちょっと考えていただきたいのですけれど、皆さんが民進党側のクーデターを起こす立場だったら、どうしたら今回の決起を成功させることができるのかと。
民進党の、国軍の第6軍はこのあたり(台北市の周辺)に今いて、首都(台北市内)には憲兵隊がいます。陸軍と憲兵隊は必ずしも同じ命令系統ではないのだけれど、両方とも総統の直轄です。総統がいて、国防部長がいて、国防部長というのは防衛大臣みたいなものです。その下に陸軍と憲兵隊がいます。憲兵隊の司令長官は中将です。
―― いかがでしょうか。もし民進党側で、クーデターを起こしたいと考えたときに、どうやって成功させるかというところです。
上杉 憲兵隊の任務は総統の防衛、首都の防衛、こういう軍事的な反乱に対する制圧の任務をしていて、首都を防衛している中で、首都から1時間から30分ぐらい離れたところに位置している民進党がどうやって政権を奪取するかです。
―― どなたか、私ならこうするという方、いらっしゃいますか。
(会場の回答) 憲兵隊の服装をさせた工作員を何十名か送り込む。
上杉 (それは)攪乱するということですね、偽装して。
2・26事件のときも、近衛部隊が普通の陸軍とは違うシンボルを付けていたので、そういうことをやる可能性はあります。
―― あのときは、2・26事件のときもこの事例を考えるときにすごく参考になると思うのです。2・26事件の失敗要因として先生がお書きになっていたのが、首都圏の中に対抗できる部隊がけっこうあったということです。
それから海軍が別なので、海軍が陸戦隊を横須賀なりどこかに準備をしていることです。あとは、昭和天皇が「朕自ら近衛師団を率いて討伐する」と、激怒されたということです。そのあたりが込みで、結局うまくいかなかったのでということでしたけれど、台湾の場合は逆に近くにいなかったりするので、それはそれなりの難しさがあるように思うのですけれど、答えとしては、どうなのでしょうか。
上杉 そうですね。もちろん重要になってくるのは多数の兵を動かせるような実戦の部隊なので、そうなると、実戦部隊はここ(台北市の周辺)の機動歩兵旅団と機甲旅団(装甲車の旅団)です。これ(右下)がヘリコプター部隊です。ヘリコプター部隊と歩兵部...