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タンパク質と筋トレが高齢の衰えを予防する

新病態フレイルとサルコペニア(2)予防と治療

大内尉義
国家公務員共済組合連合会虎の門病院 院長/東京大学名誉教授/医学博士
情報・テキスト
健常者と要介護の間に位置するフレイル、四肢の筋肉が衰えるサルコペニア。いずれも高齢者にとって深刻な状況だが、適切な介入があれば回復するという。国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長の大内尉義氏が「新病態フレイルとサルコペニア」について語る第2回目は、その予防と治療にフォーカスを当てる。(全3話中第2話)
時間:08:42
収録日:2018/02/07
追加日:2018/07/04
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≪全文≫

●タンパク質の十分な摂取がサルコペニアの予防に


 第2回目は、サルコペニアやフレイルの予防と治療について、お話をします。



 サルコペニアとフレイルの予防と治療で最も大切なのは、適切な栄養を取ることと運動をすることです。



 栄養に関して一番大切なのは、きちんとタンパク質を取ることです。タンパク質は筋肉をつくる源になりますので、原料が不足すれば当然サルコペニアになりやすく、フレイルになりやすいのです。したがって、タンパク質を十分取ることが重要です。どのくらいタンパク質を取ったらいいかという目安ですが、体重1キログラム当たり少なくとも1.1グラムは取っていただきたい。

 体重50キログラムでは55グラムということになりますので、「なんだ、そんなものか」と思われるかもしれませんが、実はお肉やお魚の中のタンパク質の量は、その重さの5分の1ぐらいしか含まれていません。したがって、55グラムの量のタンパク質をとろうと思うと、だいたい200~250グラムぐらいのお肉やお魚を取らなければいけないということになります。



 それだけの量のお肉やお魚を取るのはなかなか難しい場合が多いのですが、食事の中には植物性のタンパク質も結構含まれています。目安としては、植物性のタンパク質が半分、動物性のタンパク質が半分というところでいいかと思います。お肉・お魚は、どちらを取ってもいいのですが、だいたい1:1の割合で同量ずつ取っていただくのがいいかと思います。タンパク質摂取が、栄養で一番大切なところです。




●食事で取りきれなければアミノ酸サプリメントも


 ただ、お年を取ってきますと、なかなかかめないという問題も起こってきて、特にお肉を食べることが難しくなってくる場合があります。そういった場合には、サプリメントなどでタンパク質の源であるアミノ酸の製剤を取ることも有用かと思います。



 特にアミノ酸の中でも、少し難しい言葉ですが「分枝(岐)鎖アミノ酸」(BCAA)です。アミノ酸の化学構造の中で、側鎖に枝分かれするアミノ酸のことで、バリン、ロイシン、イソロイシンなどが相当します。

 これらの分枝鎖アミノ酸がサルコペニア・フレイルの予防に非常に有効だというデータも出ています。もし十分なお肉・お魚が取れない場合は、サプリメントを取ることも一つの方法だと思います。BCAAはスポーツドリンクの中にも含まれているのを皆さんお聞きになったことがあると思いますが、それと同じものです。


●サルコペニアにはスクワットやダンベルで白筋を鍛える




 もう一つは運動です。実は骨格筋には赤い筋肉(赤筋)と白い筋肉(白筋)の2種類があります。赤筋は、瞬発力はあまりないけれども持続力に富んでいる筋肉です。マグロの赤身を思い出してください。マグロは遠洋航海をしますので、持続力に富む赤筋が発達しているのです。

 これに対して白筋は、持続力は乏しいけれども瞬発力に富んでいる筋肉です。例えば、ヒラメを思い起こしてください。ヒラメはほとんど白身ですが、普段は海の底にじっとしていて、獲物が来たときにパッと飛びつきます。そうした場合には持続力は必要なく、瞬発力が必要なのです。

 人間のサルコペニアという状況では、赤筋と白筋のどちらが障害されるかという研究がありますが、実は白筋の方が障害されることが分かっています。それでは、白筋を鍛えるにはどうしたらいいかですが、スクワットやダンベルなどを使った、いわゆる無酸素運動と呼ばれる筋トレが白筋を鍛えるのに有効といわれています。もう一つの持続力を特徴とする赤筋を鍛えるには有酸素運動が有効で、歩行あるいは早足歩行、ダンス、水泳ということになります。

 運動というと、皆さん、有酸素運動を思い浮かべがちだと思いますが、サルコペニア・フレイルの予防にはむしろ筋トレをした方がいいという考え方に最近、変わってきています。

 どのぐらい筋トレをするかということですが、1日に30分程度を、一度にやるということではなく、何回かに分けても結構です。家の中でできるスクワットやダンベル体操を、一度専門家のトレーナーに教わって、それをお家でやっていただければいいかと思います。


●フレイルやサルコペニアに効く薬はまだ開発されていない


それから、お薬で何かいい方法はないかということですが、実はフレイル・サルコペニアを予防あるいは治療するためのいい薬はあまり手元にないというのが現状です。

 中にはビタミンD、あるいは...
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