新病態フレイルとサルコペニア
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口腔機能の衰えが全身機能の虚弱につながる
新病態フレイルとサルコペニア(3)オーラル・フレイル
大内尉義(国家公務員共済組合連合会虎の門病院 顧問/東京大学名誉教授/医学博士)
加齢とともに「硬いものが食べられない」「誤嚥する」など、口腔機能の低下が見られる。この状況と全身機能との関係の研究が近年進み、「オーラル・フレイル」という概念が提唱されるようになった。国家公務員共済組合連合会虎の門病院院長の大内尉義氏が「新病態フレイルとサルコペニア」について語る第3回目では、このオーラル・フレイルにフォーカスを当てる。(全3話中第3話)
時間:6分05秒
収録日:2018年2月7日
追加日:2018年7月6日
≪全文≫

●うまくかめない、飲み込めない「オーラル・フレイル」がフレイルと関連


 それでは「フレイルとサルコペニア」の第3回目として、フレイルから生まれてきた新しい概念、「オーラル・フレイル」について、ご説明をしたいと思います。

 オーラルは「口」という意味です。「口がフレイル」は、すなわち食物がうまくかめない、飲み込めない、誤嚥をするといった現象を総称して「オーラル・フレイル」と呼ぶようになってきました。

 この概念を初めて提唱したのは、東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授です。飯島先生は、サルコペニアやフレイルの成り立ちに、うまくものがかめない、飲み込めないということが非常に大きな影響を与えていることに着目して、「オーラル・フレイル」という言葉を提唱しました。

 ものがかめないと、かめるものだけ食べるということになります。そうすると柔らかいものを好んで食べるので、かむ機能はますます落ちてきますし、食品のバラエティも減ってきます。ということで、さらにかめなくなります。したがって、そういう状況を続けると、どんどんと口のかむ機能、飲み込む機能が悪くなるという悪循環が続くことになります。これを途中で断ち切る必要があります。


●「かむ」以外に舌圧や滑舌も影響する口腔機能


 口の機能、ものを飲み込む機能をもう少し細かく見ていきます。まずものを口の中に入れて、入れたものをかむ。かんだ後に舌を上あごに押し付けて、咽頭の方に食塊を押し込む。そこで咽頭の嚥下反射が起こって、ものを飲み込む。こうしたプロセスになります。

 ものをかむ力、ものを飲み込むときに舌を上あごに付けて食塊を喉の方に送る力を「舌圧」といいます。それから、言葉をしゃべるときにどれだけ舌がよく動くかという舌の巧緻性(滑舌)が口腔機能の具体的な要素になっています。

 かむ力、舌を上あごにつける力、舌の動き、これらの機能は全て加齢とともに直線的に低下していきます。

 かむ力が落ちているときや舌圧の加減、また舌がどれぐらいうまく回って言葉が速く言えるかが、サルコペニアと非常に深い関係があることが証明されています。


●歯科医による口腔ケアと「パタカラ体操」


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