●菅政権は日米首脳会談で成果を出したがコロナ禍に襲われた
今から少し日本の話をしたいと思います。こういう(激動と激変の)世界の中で、日本はどういう方向を取るべきかについてです。
まず、2021年は菅政権です。菅政権は、安倍政権を継承するということで、電光石火の早業で、首相の座を確保しました。菅氏は、DX(デジタルトランスフォーメーション)ということでデジタル庁をつくるなど、結構大きな政治もやっています。これは1年間で500人もの所員を集めて、その内120人は民間人です。これをつくるのは大仕事なので、よくやったと思います。
それから2050年にカーボン・ニュートラルを公約しました。これは2020年10月26日です。公約して、2カ月ぐらいのうちに、5つぐらい法律を通しました。産業界を網羅して、日本の産業界は真面目なので一所懸命やり出しました。これも菅氏の功績だと思います。そして、生活者目線の政策を行いました。電話料金引き下げや、不妊治療の保険適用、地銀改革や医療負担など、分かりやすいのです。
菅氏の在任時代の一番大きな問題は、日米首脳会談だと思います。これは2021年4月にやりました。この日米首脳会談について、アメリカの政権が日米首脳会談をやるのに、こんなに前準備したことは歴史上初めてです。
そこでは次のことが決まりました。とにかく日本の政権をしっかり取り込むために、日・米・オーストラリア・インドの4か国を巻き込んでQuadを発足し、中国包囲網の中にじわっと入れようとしました。インドはさすがに、中国の名前を出すなら付き合わないと言われたので、気をつかったのですが、これによって初めての首脳会談をやりました。これは菅氏を巻き込むためです。
バイデン政権ができてから、政府の高官が海を渡って海外に行ったのは、日本が最初です。これは2+2会議で、日本に国務長官と国防長官が来ました。これは初めての出来事で、菅氏がバイデン氏に電話をしました。そのときにバイデン氏は、尖閣列島は日米安保条約5条の適用内だと言ってくれたのです。これも結構大きなことです。オバマ氏は何となくそれを言っていたのですが、バイデン氏は明確に言いました。これは全部菅氏を巻き込むためです。菅氏は、それに気がついていたとは思います。
2+2のシナリオで、初めて中国を名指しで、海警法の問題、第一列島線の問題、台湾海峡、尖閣列島など、全てについてずっと批判しました。これは珍しく、2+2でこれだけ明確に中国批判したのは初めてです。
その時に、日米首脳の共同声明がありました。10数個のポイントがありますが、二つだけ言います。一つは、台湾海峡の平和と安定の重要性を、ここで強調しました。日本は「その中に両岸問題の平和的解決を入れてください」と言って、それを入れてもらいました。そうしないと、中国にメンツが立たないのです。「台湾を明記しますよ」と言われて、菅氏は「いいでしょう」と言いました。そうした中で、日本はアメリカの軍事力が足らないので、日本の防衛力をはるかに強化するための決意をしたと共同声明に書いてあり、菅氏はそれを会見で読んでいます。そんなことは日本の国民は全く想像していませんでした。
ところが、その後、帰ってきてからコロナの感染が拡大していて、とてもお気の毒でした。コロナ患者がどんどん増えてきたので、菅氏は2020年9月には支持率が74パーセントもあったのに、2021年1月には40パーセントになって、2月になったら30パーセントほどになりました。その中で、コロナのために緊急事態宣言が出ている中で、東京オリンピック・パラリンピックをやりました。やってみたら良かったのですが、日本の国民は7割反対していました。こういうことがあり、菅氏は本当に運が悪いです。
そうしているうちに、オリンピックが終わってから第五波が来ました。これがものすごくて、全国で2万人も出て、ヨーロッパ並みになりました。一番の問題は、医療崩壊です。菅氏の人気はもうずっと落ちてしまいました。
●日本に求められているのは「司令塔」
菅政権が1年で終わり、世界のメディアが、「また日本の不安定な政治が始まったか」と言っていました。やはり日本国民としては、本格政権で腰を据えて、やってもらいたいのです。
しかし、今までの岸田氏が発言してきたことや書いたことを全部見ても、言葉はとても聞きやすいし、表現は良い。そして、お人柄も良い。しかし、内容も方向性も見えません。私の感覚からしたら、点数を付けろと言ったら、戦略になっていないので、あれはもう落第点です。ただし、お言...