●米中は事実上の戦争状態にある
最後に米中対立下の国際戦略についてです。
今、米中対立は事実上の戦争状態に近い。アメリカは中国包囲網に、同盟国を糾合しています。中国が一番の敵だとアメリカは言っています。インド太平洋地域が仮想戦域です。Quadはあまり役に立ちませんでしたが、AUKUSがすごいのです。
AUKUSでは、フランスが10隻ぐらい潜水艦をつくるのをもたもたしているものですから、オーストラリアのモリソン首相は、もうアメリカやイギリスに鞍替えして、8隻の原子力潜水艦にしてしまいました。原子力潜水艦は、普通の潜水艦の倍ぐらいの規模を持っていて、積めるミサイルがもう圧倒的に強いのです。それで2年間ぐらい海の底にいれるので、表へ出る必要がないのです。普通の潜水艦だったら、2週間置きぐらいで出なければいけないですが、その必要がありません。それが8隻も中国を囲む拠点にいると、さすがに中国軍もうかうかしていられません。狙われると終わってしまうので、危ないです。完成まであと10年くらい掛かりますが、そういうことを本気でやっていて、戦争準備に入っているということです。
ところが、ミサイル戦力で大差があります。中国は短距離ミサイルが700~1500、中距離ミサイルが800~1200あります。中距離は、グアム島・日本が射程内で、短距離は、台湾が射程内です。それが中国の東海岸に槍衾になっているのです。そのため、他の国の勢力が中に入ろうとすると、木っ端微塵になります。さすがにこれは、アメリカとロシアで中距離核戦力全廃条約(INF)結んだので、できなかったのですが、それをトランプ政権時に廃棄とし、2020年からできるようになりました。バイデン政権で今度やると言っているのですが、やるといっても、中距離ミサイルをどこに置くのでしょうか。アメリカからやるとなったら長距離になります。1万6000キロ飛ぶ大陸間弾道弾で、これでは本当の戦争になってしまいます。
2022年は、バイデン氏も習近平氏も、台湾でドンパチはやりたくありません。習近平氏は11月に終身主席にならなければいけないし、バイデン氏はトランプ氏を相手に戦わなければいけません。
●日本には戦争をさせない準備を知恵が求められている
しかし、もし台湾が有事になったら日本は巻き込まれます。安倍氏が変えた日米安保条約の改訂版はこうなっています。2015年の安保関連法では、重要影響事態があり、日本はアメリカ軍を後方から支援できます。もう一つは、米軍が攻撃されて、日本の存立が危ぶまれる状態で、存立危機事態が定義されているのですが、このときは、日本は積極的に戦闘に参加します。そうすると、中国軍とドンパチやることになります。そして中国の攻撃目標は当然、在日米軍基地、尖閣列島、沖縄、日本全土になります。
そのとき、日本は避難や安全確保の準備ができているのでしょうか。軍事産業や生活物資の移動ができているでしょうか。これは大変なことで、ワクチンどころではありません。そして、その供給を確保する準備があるのでしょうか。これは今からやらなければ間に合わないです。アメリカのインド太平洋軍の高官は、5~6年うちには何かあるのではないかと言っています。そうでなければよいですが、こういう問題は最悪を想定するので、あると信じて、物資の移動をしていなければダメです。
ただし、もっと重要なのは、戦争をさせない準備と知恵です。これは何より重要です。戦争したら高くつきますよということを、当事国に教えなければいけません。そのためには、強力な反撃能力を演習し、他国を入れて、周知させる必要があります。
特に、沖縄の南西諸島です。毎日のようにヨーロッパの軍隊と一緒にやっているので、実をいうと、これは良いのです。ヨーロッパがわざわざ来てくれているので、そこではサイバーを徹底的に使って、まずは情報戦です。そういう準備をしていなければいけません。
米中が非常に対立しています。米国と安保で、中国とは経済だという良いとこ取りはできません。例えば安保です。日本とアメリカは安保ですが、アメリカは安保だけではないです。ファーウェイを使ってはいけないと日本の政府に厳しく言っているので、孫正義氏は絶対使いたかったと思いますが、全部使っていません。
要するに、安全保障と経済は一緒になっているのです。中国は、ファーウェイのような企業から受注しないのであれば、その損害を賠償させる法律を、2021年の1月に通しています。だから日本の企業に損害賠償を請求してくるかも...