これまで、「補正予算を、いくら、どのように使ったのか」については、非常に見えづらかった。政府答弁でも「溶け込んで、分からない」という説明がよくなされていた。だが、2024年に、戦後初めて「補正予算の会計検査」を行ったところ、見えてきたのは、驚くほど多額の繰越金の存在と、その処理のために行われた民間への「多重委託」の問題であった。しかもその流れは、コロナ禍以降も維持されている。いま、補助金の実態はどうなっているのか。その内実を詳しく解説する。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
≪全文≫
●戦後初めて行われた補正予算の詳細な検査
―― ということで、今、コロナの話を伺ってきたわけですけれど、コロナに限らずいろいろな問題があると思うのですが、次はどのような問題になりますか。
田中 はい。これは2024年の秋に報告をしたものなのですけれど、「補正予算そのもの」です。(補正予算の)全体を検査してしまえということで、臨時国会の直前に検査報告を出させていただきました。
―― 補正予算をそのように検査することがあるのですか。
田中 これは初めてです。
―― 初めてなのですか。
田中 はい。それには理由があります。
この図をご覧いただきたいのですけれど、これは国会に提出されている決算報告書です。この決算報告書に色をつけているのですけれど、予算と決算は本当に違うのです。
例えば、当初予算額と言っていますけれど、決算から見ると「歳出予算額」といったりするのです。しかも、当初予算の他に、補正予算、予備費、前年からの繰越とか、決算から見ると歳入にはいろいろな種類の財源が入っているのです。これを足し合わせたものが決算で見たときの収入になります。
さらにもう1つのポイントは、このピンクのいちばん左側のところです。「支出済歳出額」と書いてあります。実はこの予算を決算で見たとき、どのぐらい使ったのかということについては、「いろいろな財源をひっくるめて全部足し合わせて、いくら使ったか」しか出ないのです。ですから、補正予算だけ取り上げていくら使ったのかです。それから令和2年に10兆円の予備費が講じられていますけれど、これだけ取り出して、いくら使ったのかということをこの決算制度上、見ることができないのです。
―― 今まで「そういうものがなかった」ということなのですね。
田中 なかったのです。ですから、よく国会でも質問があるのですけれど、政府が「溶け込んで、分からないのです」という答弁をよくされているのですが、これはこの決算書のことを言っています。
―― では、それにメスを入れられたということになるのですね。
田中 はい。これは戦後初です。
●コロナ禍が収束しても、令和元年の支出には戻っていない
―― なるほど。それで見えてきたものはどういうものになるのでしょうか。