少子高齢化と財政の役割
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日本の医療制度の問題点は「非効率」と「不公平」
少子高齢化と財政の役割(9)医療制度の現状と問題
田中秀明(明治大学公共政策大学院専任教授)
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授・田中秀明氏が、「少子高齢化と財政の役割」のテーマの下、医療制度の問題にメスを入れる。医療はかけた費用と結果が必ずしも比例せず、仕組みも複雑になっているが、やはり問題は日本独自の医療制度にある。総じていえば「非効率」で「不公平」だということだ。(全12話中第9話)
時間:14分51秒
収録日:2017年8月28日
追加日:2017年10月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●歯医者、CT、MRIの数、人工透析費用から見る医療制度問題

 
 シリーズ第9話目は、医療制度についてお話しします。

 前回の年金についてのお話同様、最初にクイズを出します。第1問は「全国の歯科診療所とコンビニは、どちらが多いか?」です。どちらだと思いますか?

 これは時々いわれていることですが、実は歯科診療所の方が多いのです。歯科医院は全国に約7万くらい(編注:厚生労働省「医療施設動態調査/平成29年6月末概数」より)で、コンビニは5万5千くらい(編注:コンビニエンスストア統計調査月報/2017年8月度より)あるそうです。私は東京に住んでいますが、本当に歯医者は多いですね。コンビニの周りには必ず歯医者があるといってもいいと思います。

 それから、「世界にあるCTやMRIのうち日本にはどのくらいあるか?」ですが、仮に世界にCTやMRIが1万台あるとして、日本にどのくらいあるか想像がつくでしょうか。おおざっぱにいって、世界の半分は日本にあるのです。MRIやCTは高いものだと1台10億円くらいします。そのように高い機器を償却するためにはとにかく検査、検査と、検査を何度も行わないといけないのです。

 次の質問は人工透析についてです。皆さん、人工透析は年間どのくらい費用がかかるか想像はつくでしょうか。ひと月におおよそ50万円ほどかかります。年間にすると600万円ですね。これは実は病院にとってはドル箱なのです。患者さんが病院に来て、機械にチューブでつないでおくだけで、年間600万円稼ぐことができるのです。日本の透析患者数は世界1です。例えば、イギリスなどでは、高齢者はもはや透析は受けられません。そうした厳しい国もあります。


●避けては通れない医療費問題


 第3の質問です。もし重篤な病気、例えばがんや白血病といった病気のため、「月に1千万円の医療費がかかった場合、ひと月にどのくらい病院の窓口でお金を払わなければならないでしょうか?」

 自己負担の割合は3割ですから、もし1千万かかったとすると、300万円になりますが、皆さんは払えるでしょうか。実はその額ではありません。所得によっても違いますが、おおざっぱにいうと、ひと月に払う自己負担の上限は10万円強です。これは、高額医療制度というものがあり、非常に高額な医療費がかかっても上限があるのです。血友病など非常に高価な治療を必要とするときは、ひと月1千万、2千万と...

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