●予算制度問題を考える-あまり守られていない財政規律
「少子高齢化と財政の役割」の第6回は日本の問題、日本はどうしたら財政再建ができるかについて、お話ししたいと思います。
日本ももちろん何度も予算制度改革、あるいは財政再建の取り組みを行っています。しかしながら、これまでの改革はほとんど失敗しています。なぜでしょうか。結論を先にいえば、いろいろな改革をやっていますが、特に予算制度改革が不十分であるといえます。
最初に予算制度の問題を考えるための枠組みについて、紹介します。この図は予算制度とプレーヤーの関係を簡単に説明しています。予算を巡るプレーヤーには、政治家、あるいは官僚たちがいます。先に紹介したように、政治家たちに財政規律を守るインセンティブはあまりありません。選挙で勝つためには、歳出を増やしたり、減税をしたいといった誘惑にかられるのです。
●ルールを守らせる仕組みが必要
こうしたいわば誘惑を抑えるために、予算制度というものがあります。日本では、財政法という法律があって、「赤字国債の発行は認められない」といったことが書かれているのですが、法律に書いてあるからといって、プレーヤーたちがそれを守るとは限らないのです。日本の財政法にはまさに「財政収支は均衡しなければならない」と書いてあるのですが、守られてはいないのです。
プレーヤーたちにルールをどうやって守らせるかということが、問題になっているのですが、ここではコミットメントが大事です。政治家たちにルールを守らせるような仕組みが必要であると考えられます。その仕組みは予算制度やいろいろな外的環境によるものです。これまでの諸外国の例を見てみると、経済危機が起こって政治家たちがルールを守らざるを得なくなったのです。したがって、コミットメントを働かせるような仕組みが必要だということです。
●財政再建成功例2つのポイントから日本の現状を見る
そうしたコミットメントを働かせるような予算制度改革の鍵は、諸外国の改革を調べてみると2つあります。一つ目は権限を集中化させることです。つまり、各省のいろいろな人たちが、こういう予算を増やしてくれ、ああいう予算を増やしてくれと、それぞれの自分たちの利害に沿って要求したときに、それを調整する必要があり、調整するためには、誰かが集権的に決めるという仕組みが必要...