米中対立の行方をどう読むか
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「冷戦」という言葉には三つの定義がある
米中対立の行方をどう読むか(2)対中政策はなお揺れ動く
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
冷戦という語には三つの定義があり、それらに必ずしも米中関係は合致しない。より現実的には、アメリカが中国に対して経済的な牽制を仕掛ける可能性が高い。これに対して、中国も長期的には発展の可能性があり、アメリカの戦略も揺れ動くことになるだろう。(全7話中第2話)
時間:7分42秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2019年5月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●冷戦ということばには三つの定義がある


 とりあえず、厳しい対立で長期にわたって、米中が今後も対立を続けていく意味で「冷戦」という言葉を使っているなら、それは明らかにそうでしょう。別の意味での冷戦ではなく、覇権を争う二つの大国があれば、いつもこの意味で冷戦はあったということです。それこそトゥキディデス(古代ギリシアの歴史家)の時代から延々とあるわけです。それを冷戦というなら、それはそういう言葉を使っていただいて結構だと思います。

 ただ冷戦の定義をするとき、私はいつも三つあると思います。一つ目はイデオロギーや価値観が根本的に違うということ。それが対立の一番の焦点になる大国間対立です。二つ目は軍事競争で、軍拡競争が果てしなく続くことです。三つ目は覇権闘争で、世界の覇権を争うことです。米ソはアフリカ諸国、中東に覇を競おうとして、一生懸命衛星国をそれぞれつくろうとして頑張りましたが、あのような勢力争いです。歴史学者的にいえば、この三つがそろって初めて冷戦だということです。

 今、米中の対立を考えていけば、二と三は当てはまるのかもしれません。覇権争いというのは、AIやロボティクスやゲノムといった先端技術をめぐる覇権争いだといわれます。

 二つ目の軍拡競争ですが、果てしなく起こる軍拡スパイラルがつきもので、これもそうかもしれません。中国も航空母艦をつくっています。ただ第二のところは、イデオロギーはそうですが、確かに中国は共産党一党独裁とはいうものの、決定的なことは市場経済を採っていることです。資本主義経済といいますか、もっといえばいわゆるアメリカを中心とした民主主義的な市場経済、自由主義的な市場経済を取っている国との貿易、あるいは経済取引関係です。これを学者は「相互依存関係」といいますが、これが非常に強いのです。ここが決定的に冷戦となり得ない大きな要因です。

 観念的な議論は別にして、冷戦かどうかという議論はこれから学者がすればいいのでしょうが、もっと大事なのは、日本にとってこれがどういう意味があるかという、具体的、現実的な話です。これを考えなければいけません。


●これからアメリカはいかに中国を経済的に牽制するか


 そこで私は、アメリカが中国の経済を追い詰めていき、そして中国を牽制しながら締め上げていって、中国の行動を改めさせると考えます。例えば、中国...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
高市政権の進むべき道…可能性と課題(2)財政戦略3つの問題点
高市政権の財政政策の課題は…ポピュリズム政策をどうする?
島田晴雄
平和の追求~哲学者たちの構想(7)いかに平和を実現するか
国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
川出良枝
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
『タテ社会の人間関係』と文明論(8)タテ社会の構造改革を議論する
ヒントは幕末期の処士横議!?…タテ社会の構造改革に向けて
與那覇潤
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(1)人を真に活かす人事評価とは
ソニー流の「人材論」「新規ビジネス論」を具体的に語ろう
水野道訓
おもしろき『法華経』の世界(7)真の救済に向かう
イエスも法華経のアバター?「全世界救済」の具体像を示す
鎌田東二
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一