●米中が新冷戦になるというのはいいすぎである
―― アメリカと中国との間に冷戦がこれから長期的に起こる可能性があるのか、お聞かせください。
中西 近年の米中関係は、世界を揺るがすようなインパクトのあるニュースになっています。特に今、アメリカによる中国からの輸入品に追加関税をかけるという、いわゆる米中貿易戦争が、日本にものすごく大きな余波があります。2018年の後半から非常に緊迫した米中経済戦争のような様相を帯びていました。とりわけ同年の12月初めには、中国を代表するIT企業のファーフェイがアメリカの新しい対中経済政策の下で世界的に排除されていくという新展開があり、日本の関係業界だけではなく、日本全体の大きな関心事になっているわけです。
その中で、このままいったら米中新冷戦となるのではないのかという声も随所に上がっています。そこで、今のアメリカ、中国の新しい関係をどう考えるかですが、少し踏みとどまって、ここで考えることと、それから長い視野で今の米中関係がどう展開して、次に現れてくる新しい国際秩序がどういう姿になるかを日本人がしっかり押さえておく必要があります。今の日本の雰囲気は、何かうろたえているようで、何が起こっているのだろうか、あるいはこのままいったらどんなことになるのだろうか、という当事者意識が希薄な分だけ被害者的発想にもつながっていて、大変不健全な状況だと思います。
そこで、最初に私なりの結論からお話しします。これが「米中新冷戦である」という声はありますが(「新冷戦」という言葉の定義には問題はありますが)、その語感的にいえば、あるいは米ソ冷戦の歴史を踏まえていえば、米中が今後冷戦状態に陥っていくイメージが人によって少し違いますから、あまり意味はないけれども、あえていえば「米中新冷戦になる」というのはいい過ぎだと思います。
これは、長期にわたってアメリカが中国の包囲網を築いていく、すなわち冷戦でソ連封じ込め政策を取ったような対立関係に推移するという、そのとば口に立っている、といった昨今の評論家たちの米中関係観は間違っていると思います。
●中国は軍事的に「弱かった」ソ連とは全く異なる
中西 冷戦とはそもそもこういうもので米ソの場合はこうだったといった議論はいくらでもできると思いますけれども、そこはまた機会があればおいおい言及するとして、はっきり...