米中対立の行方をどう読むか
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アメリカは、イギリスを追い詰めた手法で、中国に迫る
米中対立の行方をどう読むか(7)金融戦略で迫るアメリカ
中西輝政(京都大学名誉教授/歴史学者/国際政治学者)
アメリカには、第一次世界大戦以降、金融戦略を駆使してイギリスの足場を崩し、覇権を奪取した歴史がある。中国に対しても、その力を使おうとするだろう。米中関係は今後も緊張が続く。日本は双方と交流しつつ、自立していかなくてはならない。(全7話中第7話)
時間:11分49秒
収録日:2018年12月25日
追加日:2019年6月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●金融を「てこ」にイギリスから覇権を奪取したアメリカ


中西 アメリカの国家戦略を考える人たちは、例えばペンタゴンにいろいろな戦略部局がありますが、彼らは何を研究しているかというと、やはり歴史とのアナロジーなのです。だから、プラザ合意などという、そんな簡単なものではなく、もっと過去からいろいろな経験がアメリカにはあります。

 例えば、スエズ動乱の時、イギリスの覇権を中東から追い出すために、それをイギリスが起こして、イスラエルと一緒にフランスも誘って、エジプトに戦争を仕掛けました。あれの本当の原因は、米英の中東における覇権争奪です。

 1956年ですから、当時イギリスはまだ世界の三大超大国の一つでした。そのイギリスを、いかにペシャンコにしてしまうか、アメリカは一生懸命いろいろな戦略を取りました。主に金融戦略でした。そしてまずはポンド売りから始まるわけです。

 詳しい話は省略しますが、あれでロンドンの株式もペシャンコになるわけです。イギリスの財政も立たなくなってしまいました。時のイギリスの首相アンソニー・イーデンは、「アメリカは実は20年前からわれわれの足元を崩そうとして、これほど効果的に動いてきたのか。アメリカの脅威というのはヒトラー以上だったんだと。われわれはそれを思い知った」という言葉で残して、ダウニング街の首相官邸を出て、辞任したわけです。

 その前にも似たような話はあります。ワシントン会議(1921年~1922年にワシントンで開催された国際軍縮会議)の時もそうです。アメリカがアメリカの覇権を守り抜く、あるいは確かなものにする上で取った金融パワーの利用の仕方、国策、地政学的な金融パワーの利用の仕方は、劇的な成功を何度も収めてきました。

 先ほどワシントン会議の話が出てきましたが、日英同盟は、なぜあの1921年のタイミングで破棄されたのか。

 第一次大戦中に、イギリスやフランス、特にイギリスがアメリカから大量のお金を借りたわけです。戦争を戦うための戦債です。ウォーデッドです。

 その返済をてこにして、日英同盟の廃棄を迫ったのがアメリカです。ですから、日本との同盟はアメリカにとって終始、目の上のたんこぶで、太平洋にアメリカの覇権を広げていくためにぜひとも必要だという一大テーマが日英同盟の廃棄でした。

 それをワシントン会議の席で、アメリカは「イギリスに対して...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫