●中国に対する封じ込め戦略は今後も続くがアメリカも打撃を受ける
中西 端的にいって、今のトランプ政権によって始まった中国包囲戦略、中国封じ込め戦略と呼べるようなものが、一つの戦略として今後も続けられることは間違いないと思います。ですから、どこかで妥協して、それで手打ちをして一件落着、または以前のオバマ時代の米中関係、あるいはそれ以前の米中蜜月とまではいかないけれども、普通の関係に戻ることはないと思います、アメリカはここまで意思表示をしているわけですから。
しかし、この政策を続ければ、アメリカにとっても相当の返り血を浴びることは確かです。アメリカにとって何が利益なのでしょうか。中国経済を追い詰めていって、自分がお山の大将で唯一の覇権国だという地位を安泰なものにすることが目的なのでしょうか。それが目的だったら、その目的は達せられないと思います。
なぜか。アメリカは経済力において、軍事力において、それから技術力において、中国よりもまだまだ大きい、中国をはるかにしのぐ力を依然として持っています。そこは間違いありません。
ただ、アメリカにとって不利な条件が三つあります。
●中国封じ込めには、アメリカと同盟国の親密な関係が必要
中西 まず一つ目についてお話しします。
中国を本当に封じ込めようとするには、同盟国とアメリカとの関係がもっと緊密でなければならないし、一体でなければなりません。米ソの冷戦の時、ソ連のような小さな脅威でさえ、アメリカは打倒するのにNATO同盟、日米安保同盟、ANZUS(Australia, New Zealand, United States Security Treaty、太平洋安全保障条約)など、あらゆる同盟国との緊密な関係があってようやく封じ込められたわけです。
ところが今のアメリカには、同盟国をこれ以上、優遇する余裕はありません。トランプ外交のせいだけではなく、基本的なベクトルとして、同盟国はむしろ重荷だとか、同盟国こそが問題だとか、そのような暴言を含めれば、トランプ政権は、私にいわせれば本当にアメリカファーストで、そしてジョージ・ワシントン初代大統領の訣別(辞任)演説におけるアメリカ国家の理想からいえば、トランプ大統領は理想の通り動いているわけです。
つまり、海外に米軍を駐留させ、海外の戦争や外交に介入することはアメリカの自由をむしばむということです。アメリカがローマ...