東アジアと世界の行方
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
習近平の指導者として危ういところとは?
東アジアと世界の行方(2)習近平の指導者としての資質
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏が、習近平政権の中国が抱える今後の問題について解説する。中国社会は2035年に本格的に高齢化社会に突入する。習近平政権は社会保障費を増加せざるを得ないだろう。しかし、習氏には指導者として危ういところが見られると白石氏は主張する。(全6話中第2話)
時間:9分44秒
収録日:2017年11月24日
追加日:2018年3月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●2035年には中国も高齢化社会になる


質問 中国の習近平国家主席は2035年くらいまでは平和国家でいくと、長期的な展望を示しています。どう見るべきでしょうか。

白石 興味深いことに、2017年10月の党大会での習近平主席のスピーチは、結局のところ4分の3ぐらいが国内の話でした。要するに、対外政策では随分と威勢のいいことを言っていますが、彼の本当の関心はやはり国内政策だということです。

 2035年には、中国も高齢化社会に本格的にキックインします。それまでは、やはり国内政策に集中するしかないという考えでしょう。人々の期待にできる限り答えるような手を打っていくということで、極めてまともだと思いました。しかし、そうは言っても、中国の人たちの期待は非常に膨れ上がっています。彼らの期待を経済や生活水準の向上だけで満たしていくのは、相当に厳しいでしょう。「中国が超大国になってアメリカと一緒に世界を仕切るんだ」という絵は、中国の人たちのナショナリズムに訴えます。だからこそ、習氏はそのような対外政策を打ち上げるわけです。


●習近平は辞めたくても辞められなくなっている


質問 国民の期待値がどんどんと上がっている社会において、指導者を務めるということは大変なことではないでしょうか。

白石 大変だと思います。実際、中国の特にシンクタンクの人たちの話を聞くと、高齢化社会に向けて社会保障費をどうするかが深刻な課題になっています。中国の社会保障費は2017年時点でおそらくGDPの6~7パーセント程度でしょう。日本はすでに25パーセントに達しています。一挙に日本の水準まで上昇できないとしても、これから10年で15パーセントぐらいにはしなければなりません。

 それだけの制度を整備し、お金をつぎ込んで対応能力を高めていかないと、中国社会は持ちません。だとすれば、それと同時に軍事強国であり続けることはできるでしょうか。中国もかなりの難局に差し掛かっています。

 これから20年間で少なくとも社会保障費をGDP比20パーセント程度にまで持っていかなければならないとすると、軍事費を積み増すことはできないでしょう。メディアでは習近平氏はずっと続けるつもりではないのかといった議論がされていますが、彼は辞めたくても辞められなくなっているのではないでしょうか。あるいは、今はまだ他に任せられる人がいないとしても、そういう人が出て...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子