●2035年には中国も高齢化社会になる
質問 中国の習近平国家主席は2035年くらいまでは平和国家でいくと、長期的な展望を示しています。どう見るべきでしょうか。
白石 興味深いことに、2017年10月の党大会での習近平主席のスピーチは、結局のところ4分の3ぐらいが国内の話でした。要するに、対外政策では随分と威勢のいいことを言っていますが、彼の本当の関心はやはり国内政策だということです。
2035年には、中国も高齢化社会に本格的にキックインします。それまでは、やはり国内政策に集中するしかないという考えでしょう。人々の期待にできる限り答えるような手を打っていくということで、極めてまともだと思いました。しかし、そうは言っても、中国の人たちの期待は非常に膨れ上がっています。彼らの期待を経済や生活水準の向上だけで満たしていくのは、相当に厳しいでしょう。「中国が超大国になってアメリカと一緒に世界を仕切るんだ」という絵は、中国の人たちのナショナリズムに訴えます。だからこそ、習氏はそのような対外政策を打ち上げるわけです。
●習近平は辞めたくても辞められなくなっている
質問 国民の期待値がどんどんと上がっている社会において、指導者を務めるということは大変なことではないでしょうか。
白石 大変だと思います。実際、中国の特にシンクタンクの人たちの話を聞くと、高齢化社会に向けて社会保障費をどうするかが深刻な課題になっています。中国の社会保障費は2017年時点でおそらくGDPの6~7パーセント程度でしょう。日本はすでに25パーセントに達しています。一挙に日本の水準まで上昇できないとしても、これから10年で15パーセントぐらいにはしなければなりません。
それだけの制度を整備し、お金をつぎ込んで対応能力を高めていかないと、中国社会は持ちません。だとすれば、それと同時に軍事強国であり続けることはできるでしょうか。中国もかなりの難局に差し掛かっています。
これから20年間で少なくとも社会保障費をGDP比20パーセント程度にまで持っていかなければならないとすると、軍事費を積み増すことはできないでしょう。メディアでは習近平氏はずっと続けるつもりではないのかといった議論がされていますが、彼は辞めたくても辞められなくなっているのではないでしょうか。あるいは、今はまだ他に任せられる人がいないとしても、そういう人が出て...