東アジアと世界の行方
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプが日本の東アジア戦略を丸のみした意味
東アジアと世界の行方(3)トランプの東アジア戦略
白石隆(公立大学法人熊本県立大学 第3代理事長/国際政治学者)
ドナルド・トランプ大統領は、2017年11月のアジア歴訪の折、日本が打ち出してきたインド太平洋戦略を丸のみしてしまった。立命館大学特別招聘教授でジェトロ・アジア経済研究所長の白石隆氏は、安全保障面で日米、欧州、インドと合意が取れたということは非常に大きな意義を持つと述べる。(全6話中第3話)
時間:6分08秒
収録日:2017年11月24日
追加日:2018年3月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ大統領は日本の地域戦略を丸のみした


質問 今後10年間のアジア情勢も変わっていくと思われますか。

白石 2017年11月初頭にドナルド・トランプ大統領は10日間もアジアを歴訪しましたが、そこには幾つか非常に面白いことがありました。アメリカの人はあまり愉快に思わないかもしれませんが、トランプ大統領は安倍晋三総理のインド太平洋戦略というアイデアを丸のみしてしまったのです。過去70年間のうち、日本が考える地域戦略を、あれほど見事にアメリカが丸のみするということは初めてでした。

 バラク・オバマ大統領のリバランス政策との最大の違いは、マルチな通商秩序の構築がすぽっと落ちて、その代わりにバイのFTAを目指しているところです。ここにはトランプ大統領のアメリカファーストの考えが入っています。ですから、日本の地域戦略を丸のみすれば、アメリカとして戦略の整合性が取れなくなってしまいます。他方、日本の戦略として見ると、日本の構想にアメリカが乗り、次いでインドやオーストラリアも乗ってくるでしょう。これはあまりメディアでは主張されていませんが、相当に重要なことです。

 裏でどのような交渉がなされたのかは分かりませんが、おそらく谷内正太郎国家安全保障局長とハーバート・マクマスター米大統領補佐官が調整したのでしょう。マクマスター氏は軍人ですから、アメリカの安全保障のプロとして、日本の地域戦略は大きな方向として間違っていないと判断したはずです。安全保障の面で、日米、さらにほぼ間違いなく欧州、インドと合意が取れたということは、非常に意味があることでした。

 さらに中国の一帯一路との関係でいえば、トランプ大統領はベトナム・ダナンでのスピーチで、クオリティー・インフラストラクチャー(質の高いインフラ)を主張しましたが、すでに安倍総理が全く同じことを主張していました。ただし、アメリカ政府がこれにお金を出すとは思えません。むしろJICA(国際協力機構)やADB(アジア開発銀行)、あるいは世界銀行のお金を使って、アメリカの企業だけでなくオーストラリアやインドの企業、そして地場の企業を巻き込み、公共財になるインフラをどのように提供していくのかを模索するでしょう。こうした構想力が試されています。


●トランプ大統領にはたがをはめないと危ない


質問 アメリカ政府は何も考えていなかったから、日本の戦略を...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄