トランプ政権の中東政策
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
トランプ大統領が認識する中東とは何か?
第2話へ進む
トランプ大統領の中東政策とその多大なる影響
トランプ政権の中東政策(1)イラン核合意脱退の影響
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者の山内昌之氏がトランプ大統領の中東政策とその多大なる影響について解説する。山内氏は『中東複合危機から第三次世界大戦へ』(2016年)の上梓後一貫して、中東の新たな冷戦から世界が再び大戦に巻き込まれかねないことに、警告を発してきた。その危機感は、2018年5月にトランプ大統領のある発言を引き金にさらに増しつつある。中東秩序を根底から揺るがしかねない米大統領の中東政策とは、いかなるものなのか。(第1話)
時間:10分29秒
収録日:2018年6月14日
追加日:2018年7月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●中東秩序を揺るがしたアメリカのJCPOA破棄


 皆さん、こんにちは。

 最近の国際ニュースをにぎわせているのは、北朝鮮問題です。中でも電撃的と思われたドナルド・トランプ米国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長とのシンガポール会談は、私たちにとってもたいへん衝撃的なものがありました。そういう意味で、日本の社会や日本人にとって今、北東アジアの安全保障と日本の将来を考える上で、大変重要なシンガポール会談に関心が集まることは、まことに当然と言わなければなりません。そのことについて私の考えはまた改めて述べることにして、今日は、最近あまり触れられていないトランプ大統領の中東政策の問題について、少し考えてみたいと思います。

 ご案内の通り、2018年5月8日、トランプ大統領はかつて結んだJCPOAを放棄すると発表しました。JCPOAとは「JOINT COMPREHENSIVE PLAN OF ACTION(包括的共同作業計画)」の略称です。イランの核開発を阻止、あるいは遅らせていくためのEUとアメリカ、ロシア等の間における包括的な合意であり、EUの中では特に英仏独が中心となっていたものでした。こうした国々との間で取り結んだイランの核危機をなんとか阻止したいという動き、これをトランプ大統領は「イランに有利だ」という理由で、今回一方的に放棄したわけです。

 同年4月14日のアメリカによるシリア空爆命令と5月8日に発表されたJCPOA破棄、この2つによって中東秩序は大きく変わろうとしています。これは中東秩序を大きく揺るがすには十分なリアクションです。特に後者のJCPOAの破棄については、アメリカがイラン側の方から合意を破ったと主張していますが、こうした違反の具体的な根拠、イラン側が破棄を挑発したとするような理由については明示されていません。核合意に歩調を合わせてきたヨーロッパ諸国からは批判の声が上がったのも当然と言わなければなりません。


●中東の新しい冷戦の構図がよみがえってきた


 私は、2016年に『中東複合危機から第三次世界大戦へ』と題するPHP新書を上梓しましたが、何回かこのテンミニッツTVでもご紹介してきたように、それから2年という時を経て、中東情勢ではこの本で指摘した複合危機という様相が、ますます強まってきています。とりわけ注目すべきは、ロシアのファクターです。2014年3月にウクライナの領土だったクリミアを併合して以来、中東に絶大な影響力を及...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫