北東アジアと中東の危機
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総選挙の論点の一つともなった北朝鮮の脅威への対応
北東アジアと中東の危機(1)三つの政体と核保有
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2017年秋現在、日本の安全保障を揺るがしているのは、北朝鮮のミサイル問題だけではない。北東アジア情勢全体が日本の安全保障に重大な危機をもたらし、中東の危機がヨーロッパやロシアへの脅威となっていることは間違いない。北東アジアと中東の危機の共通点、そして相違点はどこにあるか。歴史学者・山内昌之氏が、古代ギリシア・ローマに発生した歴史的観点を重ねて案内する。(全2話中第1話)
時間:10分42秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年10月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●独裁政・寡頭政・民主政。それぞれの問題が危機を生む


 皆さん、こんにちは。

 最近の北東アジア情勢は、日本の安全保障に重大な危機と脅威をもたらしています。他方、世界的に見ると、合わせて中東の危機がヨーロッパやロシアに対しての大きな脅威を与える存在です。そこで、北朝鮮を中心とする北東アジアの危機、また中東の、かつて私が「複合危機」と名付けた中東とヨーロッパないしユーラシア全体に関わる危機について、今日は考えてみようと思います。

 歴史的にものを考えるため、古代ギリシアの歴史家ヘロドトスの話から説き起こしてみます。ヘロドトス以来、政治を動かす代表的な政体(ポリティーク)には、簡略化すると「独裁政」「寡頭政」「民主政」の三つが挙げられてきました。ヘロドトスは、この三つを比較して次のように言いました。

 「ペルシア人は、責任を問われない形で君主の独裁を選び取った。ついでスパルタ人は、その度し難いエリート主義から貴族の寡頭政を好んだ。最後にアテナイ(アテネ)人は、混じりっけなしの自治の民主政を受け入れた」

 さらに、それぞれが失敗したのは、独裁君主政では無責任さが暴力を生み、寡頭政では図々しさが横柄さを、民主政ではその平等が無秩序を生み出したからだ、と言っています。

 これはプルタルコスが『モラリア』で述べたことにもつながります。世界史においては、政治家に冷静な思慮や分別が欠如すると、極端な姿勢や政策が生まれがちであり、しばしば深刻な政治危機を歴史上生み出してきた、ということです。


●ヘロドトスの3分類がぴたりとハマる北東アジア


 ヘロドトスやプルタルコスの指摘は、現在の北東アジアの国々にも本質的に当てはまるのではないかと思われます。まず、金正日氏の冷酷な独裁政治は、核実験や各種ミサイルによる無責任な軍事挑発を戦争の瀬戸際まで追求しています。

 また、寡頭エリート支配と呼ぶべき、習近平氏と中国共産党の少数派によるエリート主義的支配は、東シナ海や南シナ海における無分別な国際法の無視と、他の国の領土や領海を侵犯する行為を繰り返してきました。その反面、北朝鮮の核やミサイル等の軍事開発には寛容でありすぎたあまり、中国本土の安全保障さえ究極的に脅かす力を北朝鮮に与えてしまったのです。

 どうも中国のエリートたちは、この点に関して無自覚なのか、あるいはその...

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