北東アジアと中東の危機
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クルド分離・独立の動きは新たな中東紛争始まりの予兆
北東アジアと中東の危機(2)世界に拡大する複合危機
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、北東アジアの核の脅威と並行して中東から世界に拡大する複合危機について解説する。中東の核問題はイスラエルとイランによる禁欲的な管理の下、北朝鮮のような「核恫喝」は見せていない。しかし、核保有についてはノーコメントのイスラエルも、イランをはじめとする他国の核開発には警告を発している。さらにクルドの分離、独立の動きは新たな中東紛争の火種となる可能性がある。(全2話中第2話)
時間:11分54秒
収録日:2017年10月5日
追加日:2017年11月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●他国の核、ミサイル開発には警告を送るイスラエル


 皆さん、こんにちは。

 前回は北東アジアと中東の核と安全保障の問題について、お話ししましたが、引き続きこの問題について考察してみたいと思います。

 中東における核の保有と核の開発は、イスラエルとイランに象徴されるわけですが、今のところは国家理性によって禁欲的に管理されています。したがって、北朝鮮のような他国に対する公然たる「核恫喝」は存在していないということに、前回触れたわけです。

 しかしながら、イスラエルの特徴は、自国の核保有について、持っているとも持っていないとも言わない、つまり何もコメントしないところです。要するにノーコメントを貫いているのですが、そうはいっても他の国、特にアラブ諸国、あるいはイランが、自国の安全保障を損ないかねない核や中長距離ミサイルの開発を進めることについて寛容ではなく、しばしばそのことを許さないといった態度を取り、そのため、空爆や破壊工作で警告してきたことも事実なのです。


●脅威はつぼみのうちに排除-イスラエルのハマー攻撃


 2017年9月7日に、イスラエル空軍はシリアのハマー郊外のミサイル製造工場を攻撃しました。これはかつて、イスラエルがシリアやイラクにおいて、核開発につながる核濃縮施設を攻撃した高度な戦略性を思わせるものがありました。今回の場合、特にイランが援助する兵器の製造を、シリアには許さないという強いシグナルを送ったということです。 

 元イスラエル国防軍の諜報局長官であったアモス・ヤドリン氏によると、「予防は治療に勝る。脅威はつぼみのうちにつみ取る。これが長期的には望ましい」という発言でした。まさに、孔子ではありませんが「春秋の筆法」をもってするならば、アメリカや日本はこの真理に鈍感であったために、今、北朝鮮の核恫喝に悩む結果になったといえるかもしれません。


●核保有国と開発実験国では、戦略の組み方が異なる

 
 しかしながらイスラエルも、アメリカや日本のことを高みで見ているだけにはいかないのです。イスラエルは現実に地域大国イランを相手にすると、かつてのシリアやイラクといったレベルの国とは違い、戦略的脅威があるからといってそれを除くために軍事攻撃をする、という選択には踏み切れなかったからです。

 アメリカや日本が北朝鮮に圧力をかけ、国連安保理、あるい...

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