中東の新たな地政学的変動
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
トルコのシリアへの軍事介入の背景と経緯
第2話へ進む
中東におけるロシア・トルコ・イランの不思議な協力関係
中東の新たな地政学的変動(1)ISの退潮とシリアの混乱
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏がシリアを中心とした中東の新たな地政学的変動および、それに関連したロシア、トルコ、イランの不思議な協力関係について解説する。IS(イスラム国)はトルコ、アサド政府軍、クルド防衛部隊などの攻撃を受け、シリアから退潮傾向にある。しかし、シリアの混乱、疲弊は深まるばかりだ。その背景には、中東およびユーラシアの地政学構造の変化と各国の交錯した思惑がある。(全5話中第1話)
時間:11分13秒
収録日:2017年2月22日
追加日:2017年4月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●シリア、イラクからの退潮しつつあるIS


 皆さん、こんにちは。

 今日はシリア情勢を中心として中東で形成されている新しい地政学的変動、そして、ロシアとトルコとイランとの間に結ばれつつある不思議な協力関係、ないしは疑似同盟関係の問題について、お話ししたいと思います。

 シリアとイラクにおけるIS(イスラム国)の退潮傾向はとどまらないところがあります。少なくとも、今ゆるやかにISの勢力が退潮しつつあるということは、事実です。(シリア北部の)アレッポがこの間、落ちたのに引き続いて、イラクのモスルの陥落が続けば、ISの本拠ラッカの安危、そこを保持できるかどうかは予断を許さない状況になってきているからです。


●シリアにおけるトルコ、アサド政府軍、YPGの勢力地図


 ここで少し、地図を見てみたいと思います。今、お話ししたアレッポはこの位置にあります。ここ(その北)がトルコ国境になります。アレッポは、トルコから南の方にかけてシリアに入っていったとき最初に位置する最も重要な北シリアの戦略的な都市であり、ダマスクスに次ぐ戦略的、あるいは経済的な都会といっても差し支えありません。ラッカが地図上、オレンジ色でほぼ埋め尽くされていることからも分かるように、今やアサド政府軍の攻略によって、政府がこの地域の支配を再回復、あるいはそれを奪ったということになります。

 それに対して緑になっている部分は、昨年(2016年)のトルコ軍のシリアへの進駐によって、トルコがISから奪い返した地域です。これは基本的にはトルコ軍とFSA(自由シリア軍)が統治しています。

 こちらは、2017年2月20日付の、ある軍事専門誌に出されていた最新の地図ですが、これでお分かりいただけるように、2つの黄色の部分はクルド人の地域、クルド人部隊であるシリアクルド人のYPG(クルド人民防衛部隊)が占拠し、今、拡大した地域です。


●トルコのシリア進駐に対する意味


 トルコ軍がシリアに入っていったのは、その中の自由シリア軍を助けるという意味に加え、ISを駆逐するという意味もありました。ISは黒で示されているところ(アレッポの東の方)まで退かざるを得なかったわけです。つまり、トルコの国境からISは遠ざけられたということになります。

 この作戦にはもう一つ意味があります。それは、クルド人たちがトルコ国境において(分かれているそれぞれの支...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生

人気の講義ランキングTOP10
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
資本主義の再定義…哲学で考える(3)害なき利とコミュニティの時代
強欲資本主義は死んだ…他者を助けることのできる他者を助ける
中島隆博
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
中国春秋戦国時代と始皇帝(4)秦と周辺国の激烈な戦い
秦と周辺国の激戦の真実に迫る…各国の兵力と秦の戦略とは?
鶴間和幸
中国史概説~『皇帝たちの中国』を読む(1)なぜ「中国史はつまらない」のか?
驚きの中国史~「中国史はつまらない」という通説の裏の波乱の真実
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(3)共産軍を殲滅――金門島での戦い
共産軍2万を金門島で殲滅…ただし一般人の命を守る軍人の本義を重視
門田隆将