●シリア、イラクからの退潮しつつあるIS
皆さん、こんにちは。
今日はシリア情勢を中心として中東で形成されている新しい地政学的変動、そして、ロシアとトルコとイランとの間に結ばれつつある不思議な協力関係、ないしは疑似同盟関係の問題について、お話ししたいと思います。
シリアとイラクにおけるIS(イスラム国)の退潮傾向はとどまらないところがあります。少なくとも、今ゆるやかにISの勢力が退潮しつつあるということは、事実です。(シリア北部の)アレッポがこの間、落ちたのに引き続いて、イラクのモスルの陥落が続けば、ISの本拠ラッカの安危、そこを保持できるかどうかは予断を許さない状況になってきているからです。
●シリアにおけるトルコ、アサド政府軍、YPGの勢力地図
ここで少し、地図を見てみたいと思います。今、お話ししたアレッポはこの位置にあります。ここ(その北)がトルコ国境になります。アレッポは、トルコから南の方にかけてシリアに入っていったとき最初に位置する最も重要な北シリアの戦略的な都市であり、ダマスクスに次ぐ戦略的、あるいは経済的な都会といっても差し支えありません。ラッカが地図上、オレンジ色でほぼ埋め尽くされていることからも分かるように、今やアサド政府軍の攻略によって、政府がこの地域の支配を再回復、あるいはそれを奪ったということになります。
それに対して緑になっている部分は、昨年(2016年)のトルコ軍のシリアへの進駐によって、トルコがISから奪い返した地域です。これは基本的にはトルコ軍とFSA(自由シリア軍)が統治しています。
こちらは、2017年2月20日付の、ある軍事専門誌に出されていた最新の地図ですが、これでお分かりいただけるように、2つの黄色の部分はクルド人の地域、クルド人部隊であるシリアクルド人のYPG(クルド人民防衛部隊)が占拠し、今、拡大した地域です。
●トルコのシリア進駐に対する意味
トルコ軍がシリアに入っていったのは、その中の自由シリア軍を助けるという意味に加え、ISを駆逐するという意味もありました。ISは黒で示されているところ(アレッポの東の方)まで退かざるを得なかったわけです。つまり、トルコの国境からISは遠ざけられたということになります。
この作戦にはもう一つ意味があります。それは、クルド人たちがトルコ国境において(分かれているそれぞれの支...