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パレスチナへの無差別行為…Z世代から噴出する深刻な疑問

パレスチナ問題…解決への道(4)ガザ戦争による変化

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
情報・テキスト
イスラエルとハマスの武力衝突は、パレスチナ内外に重大な変化をもたらした。歴史の「被害者」としてのイスラエルのイメージは、国内でも欧米でも若い世代(Z世代)中心に変化を余儀なくされている。これまでの通念や主義が通じない新時代の到来を、戦争の双方が見直し、反省すべき時期ではなかろうか。(全5話中第4話)
時間:10:04
収録日:2023/12/11
追加日:2024/02/05
カテゴリー:
≪全文≫

●戦争の休止と人質の釈放を求めるという考え方


 皆さん、こんにちは。

 イスラエルは「戦争がまだ数ヶ月も続く」と主張しています。これがハマスに対する威嚇として彼らの抵抗を絶望させるために語られている言葉であるにせよ、戦争が数ヶ月も続くとすれば、今イスラエルが動員している予備役将兵たちの戦争参加を、さらに長引かせることになるわけです。

 この予備役の兵士たちというのは、普段全く兵役と関係のない、例えば一般企業の営業職、工場の技術者、行政の地方公務員など、われわれと何も異なることのない職業を持った一般の人々です。

 彼らを、このようにして数ヶ月も戦地に引き留めておくことは、イスラエルの経済の回復余地、あるいは貿易通商というイスラエルの繁栄や幸福や発展を保障するインフラストラクチャーに対して、大きな打撃を与えることを意味します。

 それならば、彼らにはいち早く職場へ戻ってもらう。つまり戦争に終止符を打つことは、イスラエルにとってまことに重要な利益でもあるわけです。

 実際、アメリカというイスラエルのパトロンでさえ、ブリンケン国務長官が最近、「戦争の休止によって人質解放につなげるべきだ」という考えを公にしただけではなく、ほかならぬイスラエルのヘルツォグ大統領もまた、ネタニヤフ首相の強硬措置に対して異議申し立てをするかのように、戦争の休止と人質の釈放を求めるという考え方を出しています。


●国内でも欧米でも高まる戦争続行反対の世論


 さらに、他ならぬ人質の家族たちが、自らもまだ生存を期待している子どもたち、兄弟たち、肉親たちを総じて釈放するために、現在行われている作戦を終了してほしいということを呼びかけてもいます。

 これまでイスラエルの世論の中に、この種の考え方というのはほとんどなかった。つまり、ハマスというイスラム主義過激派・武装闘争派を壊滅させ、イスラエルの安全保障を獲得するためには徹底抗戦、あるいは徹底して戦争を継続するといった考え方が、これまでのイスラエル世論の多数を占めてきたわけです。

 しかし、現在行われている戦争では、必ずしもそうではなくなってきました。したがって、(2023年)10月下旬に始まったこの戦争は、イスラエルの何かを変え、アメリカの何かを変えたということもできるのです。

 実際にアメリカにおいては、大学のキャンパスを中心に、これまでであるならばシオニズムに対して100パーセントといっていいほどの支持を与えていた学生たちの中に分裂が生じた。パレスチナに対するこうした非常に無差別的な市民への圧迫、結果として市民の虐殺につながるような行為、これはもともとホロコーストというものを体験したユダヤ人の歴史的教訓を踏まえた場合に、そういった人道性あるいはヒューマニズムといったものから考えても、受け入れがたいものがある。このような意見が公然と、アメリカの若い世代、いわゆるZ世代といわれる世代の中に出てきたということです。

 ヨーロッパにおいても、ドイツを中心に、ホロコーストの舞台となり、多くのユダヤ人をガス室に送り込んだことに対する反省や教訓から、反ユダヤ主義や反イスラエル主義というものに対して徹頭徹尾注意を払い、そうした動きに対して対決してきたのがヨーロッパ人でした。

 その中でも、新しい若者たち(Z世代)の中には、だからといって、そうした歴史の重みの全てをパレスチナ人にかぶせ、一般の市民を無差別に殺戮するような行為になっていいのかという深刻な疑問や反省が起きているということです。


●イスラエルにもハマスにも、変化に向き合う時間を


 そして、イスラエル国内においても変化が見られることは先ほど申した通りです。イスラエルの側とすれば、この戦争によってどれだけ正義を貫こうとしても、どれだけハマスを排除しようとしても、ハマスは運動であるだけでなく、同時にイデオロギーでも思想でもある以上、ハマス的な考えを全て根絶することは難しいという事態に直面しているわけです。

 また、ハマスの側は、自ら徹底してイスラエルの存在を否定しています。中東では、国家のレベルにおいてはイランがイスラエルの存在、建国したという事実そのものを否定し、イスラエルの国家としての生存権を公然と否定している。そのようなほとんど唯一の国といえるのがイランです。

 ところが、ある意味ではこうしたことに通じるような、イスラエルの生存権を拒否するという考え方を持つ団体は、IS(イスラム国)やヒズボラ、ひいてはハマスも含めて、それに近い考え方を持つ組織はずいぶんあるわけです。

 しかし、彼らがそのように思って抵抗したとして、世界でも有数の武器を持ち、最新兵器で常に実戦経験を積んでいるような、世界でも最強クラスに入るイスラエル国防軍に対して、こう...
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