パレスチナ問題…解決への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
真空状態に望まれる人材と未来の展望…戦後のガザを考える
パレスチナ問題…解決への道(5)ガザ戦争終結後の展望
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
戦後のガザを考えることは、戦争の不毛性について考えることにもつながる。ガザに必要なのは、これまでとは違う仮に「ガザ再建統治機構」あるいは「ガザ臨時政府」といったものであり、パレスチナ内外からの支援を受け入れて被害者に援助を届ける政府主体である。ガザを再建するのは、パレスチナ人によるパレスチナ人のための活動である。しかし、限りのない、勝利のない戦争へとつながる可能性を残している現在、そうした未来への展望ははたしてどうなるのか。(全5話中第5話)
時間:13分18秒
収録日:2023年12月11日
追加日:2024年2月12日
カテゴリー:
≪全文≫

●戦後のガザと真空状態に望まれる人材


 皆さん、こんにちは。

 ガザ戦争について触れてまいりましたが、この戦争の結果、戦後のガザは一体どうなるのでしょうか。そうした見通しについて、少し考えてみる必要があります。そうしたことを考えることによって、ひいては戦争の長期にわたる不毛性というものについても語ることになるかと思います。

 もちろんいかなる地域においても、統治機構ないしは政府というものが存在しなければ、実際の人々の生活や日々の活計(たづき)というものを得る安定性は得られません。

 ガザにおいても、あえて仮定的に申しますと、「ガザ再建統治機構」や「ガザ臨時政府」とでもいった名称のものが作られる必要があります。というのは、これまで実効支配をしていたハマスという統治主体が消え去り、少なくとも統治能力を失ったために、ガザにはいわば権力の真空状態が生まれたということです。

 こうした真空状態を埋めて跋扈するのは、常にギャングのような不法で政治性を欠如した犯罪団体であったり、あるいはアナーキー(無政府)状態を利して実現不可能な政治的主張をするような、少数の行動主義的な団体などの人々だったりします。このいずれをもってしても国際的な支持を得られないし、ガザの人々を助けることは最終的にはできないわけです。

 このように、統治主体あるいは確たる政治機構なしには、人々の生活はできないばかりか、外から援助を受け入れることもできません。国連であれ、あるいは何らかの有志連合(コミッション)であれ、あるいはアラブ産油国を中心にしたアラブの友好国の連合体などの人々がパレスチナ・ガザ地区に対して援助をしようとしても、そこには援助を受け取るガザ側の主体というものが必要になるわけです。

 ガザ再建統治機構とかガザ臨時政府といったものが仕立てられる必要性があるというのは、すなわち外からの援助を受け入れていく、そして援助を円滑に人々の手元に届けていく役割を、責任をもって果たす人々が必要になるということです。

 こうした人たちをどう作っていくかということを、われわれはこの戦争のプロセスの中でも前を見据えた未来展望として、少しでも未来に希望や展望をもたらすという意味で考えなくてはなりません。


●穏健派アラブ諸国が賛成する新たな主体の樹立


 ハマスが統治に戻ることはあり得ません。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
松下幸之助の人づくり≪3≫理想の政治(1)国家に経営理念があれば、もっと日本は発展する
無限の可能性に挑め…国家経営を創造し、新時代の憲法を!
松下幸之助

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
テンミニッツ・アカデミー編集部
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
クーデターの条件~台湾を事例に考える(6)クーデターは「ラストリゾート」か
中国でクーデターは起こるのか?その可能性と時期を問う
上杉勇司
未来を知るための宇宙開発の歴史(13)発展する宇宙空間利用と進化する技術
最近の話題は宇宙生命学…生命の起源に迫る可能性
川口淳一郎
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(3)戦狼外交の戦略と思惑
戦狼外交で国際秩序に挑戦…戦術的な微笑外交で見誤るな
垂秀夫
数学と音楽の不思議な関係(2)リズムと数の不思議と変拍子
童歌「あんたがたどこさ」は何拍子?変拍子の不思議な魅力
中島さち子
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(1)少年時代
伊能忠敬に学ぶ、人生を高めて充実させる「工夫と覚悟」
童門冬二
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(3)戦前から紐解く財政構造
日本も資産格差は案外大きい?…預金の偏在と世代格差
養田功一郎