中東の新たな地政学的変動
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ユーフラテスの盾作戦のトルコの隠れた目的
中東の新たな地政学的変動(3)ユーフラテスの盾作戦
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
シリア和平会議の開催によって、中東問題の解決に寄与するのは、ロシア、トルコ、イランの三国という情勢が固まってきた。地上戦においては、NATOでアメリカに次ぐ規模を持つトルコ陸軍の介入するユーフラテスの盾作戦がIS駆逐の決め手となった感が強い。歴史学者・山内昌之氏に、中東の新たな地政学的変動の事情を伺う。(全5話中第3話)
時間:10分13秒
収録日:2017年2月22日
追加日:2017年4月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコがISとクルド人を駆逐した、ユーフラテスの盾作戦


 皆さん、こんにちは。前回は地図などを多用したこともあって、少し竜頭蛇尾と申しますか、最後が十分にお話しできませんでした。

 ユーフラテスの盾作戦とは何かというと、ISの駆逐だけが目標ではありません。シリア・クルド人の一掃、そしてトルコのクルド人反政府勢力とシリアのクルド人兵力が結合することにくさびを打ち込むことが、この作戦の隠れた目標でもありました。

 この作戦は(2016年)8月24日に始まりました。開始の4日前にはトルコの南東部にあるガズィアンテプという町で、ISによるとおぼしき自爆テロが起き、トルコ市民が54人も死亡したばかりでした。この町はもともとアンテプという名前で、ガズィは英雄や戦士を意味します。トルコ革命の時に、町ぐるみで抵抗したために、「ガズィアンテプ」という名前が付けられたのです。

 テロ事件をある意味で介入のための理屈、あるいは奇貨として、トルコ国防軍はFSA(自由シリア軍)を支援する名目でシリア国境を越えました。そして、たちまち北部のジャラーブルスを数時間で制圧し、ISをたやすく排除したのです。さしものISも、中東で屈指の陸軍兵力、NATO加盟国として戦闘経験も豊かなトルコ国防軍の正規兵力には太刀打ちできませんでした。9月4日になるまでに、トルコ軍の援護を受けた自由シリア軍は、ジャラーブルスの西50キロメートルにあるアルライーにつながる国境地域から、ISを全て一掃しました。その結果、ISがこの黒い地域まで押しやられたのです。


●スンナ派回廊を確保したトルコ、犠牲になったクルド人

 
 思い返しますと、日本人の人質が解放される・されないといわれていた時に、日本も含めたテレビがトルコ側から送られていた映像で実況した、ということがありました。あの時、向こうの国境の監視塔にISの旗が立っていたり、ISの関係者が現れたりするのをカメラが遠目に収めていましたが、トルコ国境から本当にすぐのところまで、この黒い勢力(IS)が伸びていたということです。

 そのIS勢力が、今やトルコ国境から遠ざけられたという安全保障上の理由が(ユーフラテスの盾作戦には)一つあります。それから、トルコ国内における治安、テロの問題が二つ目になります。それらのみならず、もう一度おさらいをしておきますと、クルド人の排除、ISの駆逐、これらの戦略的な目...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(6)世界の英雄神話とその構造分析
知恵か腕力か?…オデュッセウス、スサノオ、アルジュナなど世界の英雄たちの栄光と悲劇
松村一男
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ローマ史に学ぶ戦略思考~ローマ史講座Ⅳ(2)ならず者国家・ローマ
サビニ人略奪に見られる初期ローマの「ならず者」的性格
本村凌二
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸