中東の新たな地政学的変動
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ロシア・トルコ・イランの三国同盟が持つ意味
中東の新たな地政学的変動(4)新しい三国同盟
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏がシリアを中心とした中東の新たな地政学的変動について解説する。今や中東、特にシリアにおけるロシアの影響力は計り知れないものがある。ロシアは圧倒的な外交力を武器に、アサド政権を支持するイラン、反アサド政府勢力を支援するトルコと新たな三国同盟を結ぼうとしているが、はたして真の狙いは何か。(全5話中第4話)
時間:11分25秒
収録日:2017年3月1日
追加日:2017年4月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●シリアへの軍事干渉で優位性を示すロシア


 皆さん、こんにちは。

 引き続き、中東におけるウラジーミル・プーチン大統領とドナルド・トランプ大統領、あるいはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領やハメネイ師といった非常に個性豊かな政治家たちの戦略形勢について、お話しします。

 ロシアはシリアに対する軍事干渉の目的をほぼ達成しつつあります。特に地中海沿岸のラタキアにおいては、ロシアは作戦への参加によって、もともとアサド政権の出身地であったこの地域における失地の回復と、政権の支配地域の拡大と安定化に成功したかに思われます。何よりもラタキア一帯に対して大きな戦略的なにらみを利かせるアレッポを、政府軍がほぼ掌握したということが、ロシアの優位性を示しているといっていいと思います。


●ロシアの支援で支配地の連続性を回復したアサド政権


 2015年にロシアのプーチン大統領がシリアに軍事干渉を始める以前、シリア政府は領土の一体性はもとより、アサド大統領自らの出身地であるラタキアを中心としたアラウィー派の支配地域でさえ孤立化し、このラタキアからダマスカスに至る勢力圏、支配地域の連続性や接続性を失う危険に直面していました。

 前回もお話ししたように、トルコは、スンナ派アラブ世界、すなわち南へ抜けていく地域と直接にアクセスすることを遮断される危険性、つまりクルド人たちがシリア北部で勢力圏を持つことによってそれが遮断されるのではないかという危惧に対して、そういう事態を防止するため北シリアに干渉しました。

 ラタキアからダマスカスに及ぶ地域は反アサド政府の組織によって脅かされていたため、アサド政権の支配地の連続性が失われる危険に直面していたのです。しかし、今ではロシア軍のおかげをもって、中央シリアにおける有名な古代の遺跡があるパルミラに攻勢をかけたIS(イスラム国)でさえ押し返して、アサド政権は支配地の一体性を持つようになっています。すなわち、ISはそういった一体性を脅かす力を失いつつあるといっていいかと思います。


●東地中海でのNATOの力は弱まる一方


 その上、西シリアにおけるロシア軍基地の増大は、NATO(北大西洋条約機構)がこれまでは優勢であった東地中海におけるバランス・オブ・パワー(均衡)の回復に弾みを付けており、NATOの海・空軍の作戦能力は、東地中海のシリア沿岸の水域...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
金融政策正常化の難しさ(2)今後の可能性と日本への影響
欧米で高まる金融政策正常化の背景と今後の可能性
植田和男
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将