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ロシア・トルコ・イランの三国同盟が持つ意味

中東の新たな地政学的変動(4)新しい三国同盟

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
歴史学者・山内昌之氏がシリアを中心とした中東の新たな地政学的変動について解説する。今や中東、特にシリアにおけるロシアの影響力は計り知れないものがある。ロシアは圧倒的な外交力を武器に、アサド政権を支持するイラン、反アサド政府勢力を支援するトルコと新たな三国同盟を結ぼうとしているが、はたして真の狙いは何か。(全5話中第4話)
時間:11:25
収録日:2017/03/01
追加日:2017/04/06
カテゴリー:
≪全文≫

●シリアへの軍事干渉で優位性を示すロシア


 皆さん、こんにちは。

 引き続き、中東におけるウラジーミル・プーチン大統領とドナルド・トランプ大統領、あるいはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領やハメネイ師といった非常に個性豊かな政治家たちの戦略形勢について、お話しします。

 ロシアはシリアに対する軍事干渉の目的をほぼ達成しつつあります。特に地中海沿岸のラタキアにおいては、ロシアは作戦への参加によって、もともとアサド政権の出身地であったこの地域における失地の回復と、政権の支配地域の拡大と安定化に成功したかに思われます。何よりもラタキア一帯に対して大きな戦略的なにらみを利かせるアレッポを、政府軍がほぼ掌握したということが、ロシアの優位性を示しているといっていいと思います。


●ロシアの支援で支配地の連続性を回復したアサド政権


 2015年にロシアのプーチン大統領がシリアに軍事干渉を始める以前、シリア政府は領土の一体性はもとより、アサド大統領自らの出身地であるラタキアを中心としたアラウィー派の支配地域でさえ孤立化し、このラタキアからダマスカスに至る勢力圏、支配地域の連続性や接続性を失う危険に直面していました。

 前回もお話ししたように、トルコは、スンナ派アラブ世界、すなわち南へ抜けていく地域と直接にアクセスすることを遮断される危険性、つまりクルド人たちがシリア北部で勢力圏を持つことによってそれが遮断されるのではないかという危惧に対して、そういう事態を防止するため北シリアに干渉しました。

 ラタキアからダマスカスに及ぶ地域は反アサド政府の組織によって脅かされていたため、アサド政権の支配地の連続性が失われる危険に直面していたのです。しかし、今ではロシア軍のおかげをもって、中央シリアにおける有名な古代の遺跡があるパルミラに攻勢をかけたIS(イスラム国)でさえ押し返して、アサド政権は支配地の一体性を持つようになっています。すなわち、ISはそういった一体性を脅かす力を失いつつあるといっていいかと思います。


●東地中海でのNATOの力は弱まる一方


 その上、西シリアにおけるロシア軍基地の増大は、NATO(北大西洋条約機構)がこれまでは優勢であった東地中海におけるバランス・オブ・パワー(均衡)の回復に弾みを付けており、NATOの海・空軍の作戦能力は、東地中海のシリア沿岸の水域...
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