2017年湾岸とシリア
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
IS復活を阻むために必要なのは「失敗の要因」の分析
2017年湾岸とシリア(2)シリアの現状とISの今後
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏がシリアの現状とISの今後について解説する。トランプ大統領の米露協調による緊張緩和地域拡大はシリア戦争収束に向けての一大方針といえるが、各国、各勢力がポスト・シリア戦争を見据える中、情勢は未だ混沌としている。ISが消滅しているとはいえないのも大きな不安要素だ。(全2話中第2話)
時間:14分48秒
収録日:2017年8月30日
追加日:2017年9月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●シリア「穏健な反体制派」へのCIA支援中止とその理由

 
 皆さん、こんにちは。

 今日は、前回のカタールとサウジアラビアとの断交の問題に引き続き、もう一つ大きな局面を迎えているシリアの現在の情勢とISの現状について語りたいと思います。

 今年2017年7月にドナルド・トランプ大統領は、これまでCIAアメリカの中央情報局が提供してきたシリアのいわゆる「穏健な反体制派」に対する武器供与を中止すると語りました。つまり、訓練事業はもう終わったので、武器の供給ももはやしないと決定したのです。ただし、そこからクルド人兵力は除くということです。

 これはなかなかに意味深長で、シリアにおける反体制派は「穏健な」とつけようと他に何をつけようとも、そのほとんどは何らかの形でスンナ派の過激派組織に結び付く、あるいはそことパイプを持っている組織なのです。つまりISというスンナ派の過激派組織をたたきつぶし、解体していくために、他の過激派組織を使い、そこを援助するという構図は、実はCIAは隠れて取っていたのですが、それはやはり面白くないというのが、トランプ大統領のある意味では正常な判断といえなくもないかと思います。

 CIAは2013年に、いわゆる「穏健な反体制派」への支援を開始しましたが、2015年からロシア軍がシリアに直接介入していました。実は「穏健な反体制派」なるものはロシアから過激派、あるいは過激派に従属する存在にすぎないというレッテルを貼られていたのです。すなわち、「穏健な反体制派」といってもその内容、そして実際にはその力は非常に限られていて、そうしたところにいくら援助しても、アサド政権を放逐する可能性は限りなく少ないと、(支援自体が)疑問視されるに至ったわけです。


●対露協調路線で緊張緩和地域を拡大というトランプの意図

 
 トランプ大統領の決定は、時系列で見ると非常に興味深く、この7月の決定は7月7日のロシアのプーチン大統領との会談に先立つ措置であったということです。すなわち、トランプ大統領はシリア問題に関して対露協調、つまりウラジーミル・プーチン大統領との協力、協調の下で解決しようと考えており、ロシアとの合意を通した緊張緩和地域、停戦地域を拡大して、実質的な実を取ろうというのが彼の構想なのです。

 地図に輪を付けた部分がありますが、これが緊張緩和地域であり、ロシアとアメリカが実質的...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
プロジェクトマネジメントの基本(8)要求の分類と価値の提供
新規顧客を増やす作戦と顧客リレーションを高める方法
大塚有希子
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
会計検査から見えてくる日本政治の実態(3)戦後初となる補正予算の検査
繰越金が4割も…戦後初「補正予算の会計検査」の実態
田中弥生