2017年湾岸とシリア
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
サウジアラビアがカタールと国交断絶した背景とは?
2017年湾岸とシリア(1)カタールとサウジの断交
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2017年6月5日、サウジアラビアはカタールとの国交の断絶を発表、23日にはUAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、エジプトを加えた湾岸4カ国からカタールに対する13の要求項目が提出された。その内容と断交の背景について、中東・イスラーム史研究の第一人者である歴史学者・山内昌之氏に解説いただく。(全2話中第1話)
時間:12分37秒
収録日:2017年8月30日
追加日:2017年9月24日
カテゴリー:
≪全文≫
 皆さん、こんにちは。ご無沙汰しております。今年の夏は例年に比べても暑く、私も本日8月30日で、馬齢を重ねまして70歳の古希を迎えることになりました。そうしたいくつかのことがありまして、ご無沙汰することが多かった次第です。しかし、その間にもいろいろなことを考え、仕事もそれなりにしておりましたので、またいずれそれらについては別の機会にお話ししたいと思います。


●断交の陰には20年前の「父親解任劇」への不信


 今日は最新の中東情勢について語ってみたいと思います。あえて題しますと、「2017年湾岸とシリア」というタイトルです。最近最も注目される中東情勢の一つはサウジアラビアとカタールとの断交であり、もう一つは申すまでもなく、シリアのイスラム武装組織IS(イスラム国)が次第次第に退潮に追い込まれていることです。

 第一の論点であるカタールとサウジアラビアとの断交は、2017年6月5日に公になりました。しかし、ここには20年以上前に端を発したGCC(湾岸協力機構)参加国間の根深い事情があります。

 そもそもは、現在のタミーム首長の父であるハマド前首長が、宮廷クーデターともいうべき政権変革を起こしたことが原因になっています。彼が父のハリーファ元首長に代わって「アミール(首長)」の地位に就いたのです。こうした下剋上、もしくは親を権力から駆逐するということは、サウジアラビアのように王位継承法が厳然と機能しているすこぶる保守的な王国から見ると破格のことであり、サウジアラビアはこの件を快くは思っていませんでした。

 クーデターを起こしたハマド前首長は、ハリーファ元首長の全体的なGCC諸国との協調外交や協調的な戦略に反し、独自の地域外交を追求するようになりました。そして、他のGCC諸国、とりわけサウジアラビアとの間の軋轢を深めるに至ったのです。


●湾岸の軋轢を語るアルジャジーラと今回の要求


 軋轢を語る例はいくつかありますが、私の考えでは一番大きかったのは「アルジャジーラ」というカタールが設立した国際放送局を通してのサウジアラビア批判が、当のサウジにとっては最も腹に据えかねるものであったかと思われます。

 2002年には、度重なる報道を通したサウジアラビア批判に対して、サウジアラビアは大使を召還し、5年間カタールには置かなかったという歴史もありました。

 2013年には、ハマド首長から現在のアミ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄
これからの社会・経済の構造変化(1)民主主義と意思決定スピード
フラット化…日本のヒエラルキーや無謬性の原則は遅すぎる
柳川範之
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
哲学から考える日本の課題~正しさとは何か(1)言葉の正しさとは
「正しい言葉とは何か」とは、古来議論されているテーマ
中島隆博
AI時代と人間の再定義(5)AI親友論と「WE」という概念の問題
AI親友論って何?「Self-as-WE」と京都学派の思想
中島隆博
編集部ラジオ2026(2)「時代の大転換期の選挙」特集を解説!
「大転換期の選挙」の前に見ておきたい名講義を一挙紹介
テンミニッツ・アカデミー編集部
これからの社会・経済の構造変化(4)日本企業の課題と組織改革の壁
日本の場合、トップダウンよりボトムアップで変えるべき?
柳川範之
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(6)政治と経済をつなぐ公共哲学
どのような経済レジームを選ぶか…倫理資本主義の可能性
齋藤純一
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(6)曼荼羅の世界と未来のネットワーク
命は光なのだ…曼荼羅を読み解いて見えてくる空海のすごさ
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
会計検査から見えてくる日本政治の実態(3)戦後初となる補正予算の検査
繰越金が4割も…戦後初「補正予算の会計検査」の実態
田中弥生