混沌のシリア情勢を読む
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
なぜシリア内戦でアサド政権は持ちこたえているのか
混沌のシリア情勢を読む(3)シリア内戦の特異性
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏が、シリア情勢を「内戦」という観点から語る。山内氏は「内戦」の定義づけ、特徴検出を行い、そのいずれにおいてもシリアは「内戦」状態から外れていると指摘する。シリア情勢の特異性とは? また、その特異性はどのような危険をはらんでいるのか? (全4話中第3話目)
時間:8分00秒
収録日:2015年10月5日
追加日:2015年10月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●「内戦」の定義が当てはまらないシリア


 皆さん、こんにちは。今回は、ロシアが空爆によって本格的に内政に干渉を始めたシリアについて、再び考えてみたいと思います。

 シリアで何が起きているのかということを定義するのは、前回、前々回でも触れましたが、なかなか簡単ではありません。それは、アサド大統領という独裁政治体制に対するアラブの春によって生じた人民たちの反抗、蜂起として始まったわけです。そして、そういう反アサド勢力の動きが内戦へと変形した、変わってしまったというのが通説です。しかし、考えてみますと、内戦という言葉はなかなか厄介な言葉であり、シリアの状況を完全に補足する、完全に定義するものではないことは、最近中東問題の現地の識者なども語っていることです。

 内戦というのは私の考えでは、国民の積極的な分子、国民の中が少なくとも二つ以上の陣営に分かれて戦うことです。しかし、シリアにおいてはこういう定義は当てはまりません。


●均衡した二勢力のシリア内戦と見える理由

 
 日本人であれば内戦といいますと、古代史においては、天智天皇が亡くなってその子どもで後継者の大友皇子と、天智天皇の弟の大海人皇子(後の天武天皇)が、皇位継承をめぐって争った壬申の乱がすぐに思い浮かびます。あるいは、南北朝という日本史未曽有の内戦です。北朝の持明院統と南朝の大覚寺統との間の諸勢力が、全国的な規模で内戦を繰り広げたことを思い浮かべます。非常に短時間ではありましたけれども、日本の近代の陣痛を経験した幕末、明治にかけての戊辰戦争も紛れもない内戦でありました。

 しかし、こうした内戦的状況は、大きく分けてやはり二つの陣営がほぼ拮抗する勢力を持って対峙し合って戦うこと、これが内戦でありますが、現在のアサド体制と反アサド体制というこの内戦は、なかなかこの古典的な定義に当てはまらないのではないかと思います。確かにアサド体制は、アラウィー派というシーア派の一派、分派との間で支持基盤を持ち、キリスト教徒の共同体の間でも民衆的な基盤を持っています。しかし、この両勢力は、国土の80パーセント近くの住民を占めているスンナ派のアラブ人たちに対しては、著しく均衡を欠いた勢力であり、この二つの勢力間の争いが、いわば古典的な意味での内戦と言えるかどうかは、大変疑問なのです。

 ここであたかも内戦であるかの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(4)甘えない子が心の病気になる
二宮尊徳はヤングケアラー!?なぜ甘えない子が心を病むのか
與那覇潤
新撰組と幕末日本の「真実」(8)戊辰戦争~明治期の新撰組の魂
受け継がれる魂…戊辰戦争での奮戦と自由民権運動の情熱
堀口茉純
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(3)祖先崇拝の5つの特徴
夢魔の重圧?…なぜ「バチあたりの人間」が村八分になるのか
賴住光子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
ドンロー・ドクトリンの台頭(1)トランプ系論と2025年度版NSS
ドンロー・ドクトリンとは?トランプ系論と西半球の重要性
東秀敏
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之