●シリア軍事干渉で、ロシアは何を守りたいのか
皆さん、こんにちは。今回は、前回に引き続きシリアに対するロシアの空爆の意味について、さらに続けて考えてみたいと思います。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領のシリアへの軍事干渉は、アサド政権を救うためのものだと言われています。兵員の欠如や補給の欠乏など、さまざまな点で活力を失い、国防軍としての能力を失ったシリアの軍隊を救い、ひいてはシリアのアサド政権を救うためだというのです。しかし、それではいったい誰から、何のためにこの政権を救うのかということについては、実はあまり語られていません。
常識的に考えれば、IS(イスラム国)の脅威から救うのでしょうし、シリア国内の反アサド各勢力の脅威から救うということなのでしょう。ここまでは常識的な理解ですが、私はもう一つ別な側面があると考えています。今回のプーチン率いるロシアの軍事干渉は、アサド政権を別な脅威であるイランから守り、ロシアの中東権益を守る意図が潜んでいるという見方です。
●イランがアサド政権救済に向かう理由
しかし、皆さんはこうお尋ねになるかもしれません。「イランは、シーア派の部隊であるヒズボラや革命防衛隊などを通して、アサド政権を同じように助けているではないか。そういう意味では、イランはロシアと協調しているのではないか」。それは、至極もっともなお尋ねであると思います。
その理由として私が考慮したいのは、まず第一に、イランがこれまでアサド政権を救うために費やしてきた軍事・財政力が260億ドルに上ると伝える資料です。この260億ドルを費やした代償は何かということです。どこの国も、全くの代償抜きにただで金をくれるわけはありません。そこには必ず何らかの代償が伴うわけです。
イラン側に考えられる代償は、シリア国内のシーア派の救出です。スンナ派の多数派(反アサド政権)によって支配されている地域のシーア派の住民たちを救い出すために、自分たちシーア派やイランの別働隊、革命防衛隊やヒズボラが占領している地域のスンナ派の住民を、交換で救う。すなわち、一種の住民交換(population exchange)あるいは領土の交換(territory exchange)を、イランは画策しているのではないかといった観測が出ています。