中東の火種・シリア
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「シリアの春」を挫折させたのは外国の軍事干渉
中東の火種・シリア(1)なぜシリアの春は挫折したのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏は2016年1月、アラブ首長国連邦、トルクメニスタン、イランを訪問。そこで見聞した中東の現実を紹介しながら、複雑な上にも複雑にしているスンナ派とシーア派の宗派対立について解説。そして、「アラブの春」から5年、チュニジアから始まった変革の波の中、なぜ「シリアの春」は挫折したのか。山内氏が分析を加える。(全3話中第1話目)
時間:9分11秒
収録日:2016年2月10日
追加日:2016年3月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●国交断絶のイランとサウジ-一般市民の反応の違い


 皆さん、こんにちは。以前も申し上げましたように、私は、今年2016年の1月6日にドバイを経てトルクメニスタン、そして、イランに行ってまいりました。羽田に帰ってきたのは1月18日の午前0時を回っていました。かの地では、それぞれの大使館や総領事館を中心に、シリア戦争とイスラム国をめぐる中東の現状分析や、あるいは、慰安婦問題をめぐる日韓両国間の最終的かつ不可逆的な解決に関する東アジア情勢の変化について、講演してまいりました。

 そもそも出発直前の1月2日に、サウジアラビア政府がシーア派の宗教指導者ニムル・アル・ニムルを処刑したことに始まり、イラン人による在テヘランのサウジアラビア大使館、そして、マシュハドの領事館に対する焼き討ち、次いで、サウジアラビアによるイランとの国交断絶宣言など、すこぶる慌ただしい正月の出張でありました。その上、イランなどに滞在中、イスタンブール、ジャカルタ、ワガドゥグ(ブルキナファソの首都)といった都市でのテロ事件が相次ぎ、イスラムとテロリズムとの関係について、今改めて自問自答する毎日を過ごしています。

 特にイランにおきましては、首都のテヘラン以外に、サファヴィー朝の首都であったエスファハーン、そして、アケメネス朝の古都でペルセポリスに近い町であるシーラーズといった中央都市を回り、サウジアラビアとの断交について市民の反響なども探ってきました。こうした点で、イランの市民が相変わらず非常にリアルな感覚で事態を冷静に見ている反面、サウジアラビアの方ではかなり感情がヒートアップして、イランに対する強硬姿勢を少なくとも言葉の上ではますます強める一方であったことは、対照的でした。


●一枚岩ではないシーア派-二人の指導者にみる温度差


 もっともシーア派といっても一枚岩ではなく、イランの名実ともに憲法に定められた最高指導者のセイエド・アリー・ハメネイ師と、シーア派の住民が多数を占めかつ現在の中央政府を掌握しているイラクのシーア派とでは、温度差があります。イラクの場合には、アラビア語を話すシーア派という点、また、シーア派アラブという独特な立場もありますが、イラクの聖地ナジャフにいる大アーヤトッラー、すなわち、アーヤトッラー・アル=ウズマーと呼ばれるシーア派の最も高位で高級聖職指導者の一人、アリ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎