中東の火種・シリア
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
「ジュネーブ3」シリア紛争解決協議は順調ではない
中東の火種・シリア(2)アサド復権への曲折
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
シリアの騒乱状態は、今年も収まる気配を見せない。メディアは「内戦から戦争へ」と警戒しているが、外国勢力による公然たる軍事干渉が「シリアの春」を挫折させ、テロとの戦いを盾にとることで、内戦をとっくに「シリア戦争」にエスカレートさせている。アラブの悲劇は、全てシリアに凝縮されているかのようだ。現在のシリア危機は「世界史レベル」だと指摘する歴史学者・山内昌之氏に解説いただこう。(全3話中第2話)
時間:10分24秒
収録日:2016年2月10日
追加日:2016年3月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●はかばかしく進まなかった「ジュネーブ3」交渉


 皆さん、こんにちは。前回に引き続いて、シリア問題の終結のために招集されたジュネーブ会議の協議(「ジュネーブ3」)のプロセスについてお話ししてみたいと思います。

 率直に言って、このジュネーブ3の協議は、はかばかしくありません。当然のことです。アメリカやヨーロッパから「穏健派反対政府勢力」と呼ばれる人々が「最高交渉委員会」というブロックをつくって会議に参加したのですが、彼らにすれば交渉するべき相手がバッシャール・アル=アサドであることが理屈に合わないからです。

 アサド大統領は、25万人以上のシリア自国民を死に追いやり、多くの難民をヨーロッパに放逐している現状にも、恬として恥じる様子がありません。そして、一方ではロシアの「てこ入れ」と、アメリカの傍観と言えるほどの「無関心」によってアサド体制は蘇生したことになります。

 こうしたアサド体制に対する反発から始まったのが「シリアの春」であり、シリア内戦につながっていったことを考えると、ここでアサド体制の存続を前提とするような交渉は、政治的な自殺行為を意味しかねません。


●シリア問題はロシアとイランに委ねられるのか


 スンナ派アラブのリーダーであるサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国や、非アラブではあっても同じスンナ派での大国であるトルコは、たとえ暫定政権とはいえ、アサドその人が残ることを認めたくないという立場を明確にしています。

 それにもかかわらず、ジュネーブ3の調停者である国連のステファン・デミストゥラ特別代表が果たした仕事は、ロシアとイランというシリアの内政、政治過程に現実的に最も強い力と既成事実をつくった二つの国が、調停について前提条件をつくったという事実を受け入れ、そのリアルな現実を白日の下にさらしたというだけです。このことは、国際世論、とりわけ中東の行く末に関心を持つ人々の感情を、卑俗な日本語で言えば「しらけさせた」面がありました。

 アメリカとフランスは、2015年9月のロシア軍介入以降、11月のパリの大テロを機に、イスラム国(IS)と本格対決するために、アサドに宥和的な態度を示すようになりました。これは、アサドを「最大の犯罪者」と考えるスンナ派アラブの大勢に背を向けたことであり、シリア問題の交渉の主導権をロシアとイランに委ねたに等...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
紛争が絶えない世界~私たちは何ができるか(1)「戦争の世紀」から再び戦争の時代へ
再び戦争の時代へ――私たちは何を考え、どう動くべきか
小原雅博
ロシアのハイブリッド戦争と旧ソ連諸国(1)ロシアの勢力圏構想とNATO拡大
「ハイブリッド戦争」の実像…ロシアが考えていることとは何か?
廣瀬陽子

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
生成AI「Round 2」への向き合い方(8)「責任あるAI」への課題と覚悟
責任あるAI――マイクロソフトが掲げるコンセプトと覚悟
渡辺宣彦
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介