中東の火種・シリア
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
アサド大統領の最大の政治責任は国家存続を危うくしたこと
中東の火種・シリア(3)世界革命史から見たアサド
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
アサド大統領の暫定政権残留をめぐって、国際世論が二分している。そもそもアサド大統領の最大の政治責任はどこにあるのだろう。シリア問題の世界史的意味をめぐって、歴史学者・山内昌之氏が、18世紀フランス革命や20世紀ロシア革命との比較から「大アラブ革命」の解説を試みる。(全3話中第3話)
時間:10分56秒
収録日:2016年2月10日
追加日:2016年3月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●アサド大統領の最大の政治責任と、歴史への影響


 皆さん、こんにちは。

 前回は、復権したバッシャール・アル=アサド大統領の政治力が高まっているという事実について触れましたが、アサド大統領の最大の政治責任が一体どこにあるのかが問題です。

 それは、市民の虐殺に加えて、たくさんの難民を出したにとどまらず、そもそも国家の存続を危うくしている点にあります。シリアという国のまとまりを自分から破壊し、分裂させている点、ここに一国の大統領が基本とすべき最大の政治責任があるのです。その上で、国民への虐殺や抑圧だけではなく、多数の難民も出してしまった。このような人道性に加えて政治性の欠如という点に責任があるわけです。

 18世紀のフランス革命、20世紀のロシア革命に並ぶものとして、21世紀のチュニジアに始まりエジプト、リビアなどを経てイエメンやシリアなどのアラブ世界で進行したアラブ圏共通の動きを「大アラブ革命」と呼ぶことができるかと思います。

 この大アラブ革命の余波に共通するのが、他のフランス革命やロシア革命と並んで、終結の予測が難しいことです。さらに共通するのは、誰もが予想できない大テロや戦争を生んだ点で、これこそがむしろ歴史的に特筆するべき点なのです。


●エジプトにおける「反革命」の進行


 ナポレオンやスターリンと比べるには、アサドはあまりにも小粒であり、器が小さいと言えます。しかし、シリア危機の指数を考えると、シリアが一角を占める中東複合危機の深刻さと、それがローマ法王フランシスコの言う「まとまりのない第三次世界大戦」に発展する危険性について、個人としてのキーパーソンの一人が、紛れもなくアサドその人であることは否定できない事実です。

 この「アラブの春」5年を閲して、少々エジプトに目を転じてみましょう。エジプトでは、自由に発言を許された人々は、ひとたび自己主張の奔流がほとばしると、想像だにしなかった民主化の混沌やアナーキーの生じた厳しい現実に疲れ果て、倦んでしまいました。

 その結果、秩序と安定を求める人間の保守的本能がよみがえり、革命の沈静化、アナーキーからの回復と混沌の終結を求める手がかりとして、軍が求められるようになりました。それが、ムスリム同胞団の生んだムハンマド・ムルシー大統領の軍による排除という静かな革命を成功させたのです。

 言...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新