●不可知領域に入ったアメリカ大統領選挙の行方
アメリカ大統領選挙が近づいてきました。最近ではヒラリー・クリントン民主党大統領候補者が病気(肺炎)で倒れるという報も伝わってきています。また、ドナルド・トランプ氏とクリントン氏の間には、最近のシリア問題やイラン問題をめぐって「実は中東こそ外交の最大の焦点である」という話も伝わってきています。
どちらが大統領になるかについては、基本的にはトルコ語に「アッラーフビル(アッラーが知り給う)」という言葉や、また「インシャーアッラー(アッラーの思し召しのままに)」という言葉がありますように、いずれにしても不可知の領域に入ることですが、さまざまな調査によってクリントン氏優位に推移してきた差をトランプ氏が狭めてきたという説が伝わってくれば、CNNの最新の調査ではトランプ氏の支持率が2ポイントほどクリントン氏を上回ったという説も聞こえてきます。
●どちらが大統領になっても共通して残る「中東政策」問題
しかし、この二人のいずれが大統領になったとしても、中東政策をどうすればいいのか、という問題は残ります。常識的なことは、ただちに分かります。おそらく彼らはバラク・オバマ大統領以上には、イランに対して宥和的な政策は取らないであろうという線、そしてシリア問題に関しての画期的な手を打つことは難しいだろうという点など、いくつかのことが考えられますが、彼らが何をすべきかについても、どちらが大統領になろうと共通する点があります。
そうしたシナリオについては、アメリカのシンクタンクや専門家もいくつか考えています。今日、私が注目しておきたいのは、アメリカにある「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」というシンクタンクの中東安全保障プログラムの部長であるイラン・ゴールデンバーグ氏がまとめた「次期大統領になるべき彼もしくは彼女に対する助言」というべきレポートです。
これはなかなかよくまとまっています。私の理解したところで皆様にご紹介すると、次のようなものになります。
●就任100日以内に中東歴訪宣言を明示する
まず、「就任100日以内にメッセージを発しなければならない」ということです。これはオバマ大統領のプラハ演説やカイロ大学演説と比べても、誠に積極的な提言だと思います。
第一段階はまず、誰が大統領になっても、アメリカとの緊密な...