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アメリカとロシアの関係改善の動きは続くのか?

トランプ政権とロシアの関係(2)ハネムーンから対峙へ!?

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
トランプ政権をロシア国民は歓迎しており、トランプ大統領もロシア、そしてプーチン大統領の評価を惜しまない。一見良好に見えるこの関係の背景は何なのか? また、この関係はこのまま維持されるのか? 歴史学者・山内昌之氏が、改善の兆しが見られる米露関係の今後について解説する。(全2話中第2話)
時間:10:40
収録日:2017/02/09
追加日:2017/03/06
カテゴリー:
≪全文≫

●ロシア国民が期待する制裁解除と逆制裁の解決


 皆さん、こんにちは。前回は、ロシアのエリートとロシアの市民たちが、トランプ氏の大統領選勝利に喜んだことについて触れましたが、彼らはどの点を、トランプを歓迎する根拠としているのでしょうか。

 ロシアの人々は、トランプ大統領がロシアについて、私たちからするとへつらいとも思える表現をする、あるいはロシアを評価するというようなことを見て、喜んでいるのです。自国のこと、つまり自国の市民、政治、文化、社会を評価されていやがる人は、世界にいません。しかも、あのように個性的なドナルド・トランプ大統領がなぜ、ロシアを誉めちぎるのかということについて、ロシア人は「それはロシアが大国だからさ」「それはロシアが高い文明、文化を持っているからだ」、あるいは「ロシアの軍事力や政治力が強いからだ」といろいろな答えを出しているかもしれません。しかし、非常に端的にいえば、そこにはトランプ大統領が制裁を解除してくれるという期待感があるのです。


●対米関係改善はロシア国民にとって大きな慰め


 制裁も多くの点で、ボディブローのようにロシアの市民生活を直撃していますが、むしろ逆に、「逆制裁」というものが効いているのです。逆制裁とは何かというと、EUやアメリカから入ってくる食料品や日常の安価な物資、こうしたものの輸入をロシア自身が拒否したということです。これが逆制裁です。その結果、日用品や食料品の価格が高騰したことが、ロシアの市民にとって大変な打撃となっているのです。そして、こうしたことがなくなるのではないかという期待が、トランプ人気を支えているわけです。

 たとえ、制裁がまだしばらく続くとしても、アメリカとの関係改善、改良はロシアの人々にとって、いわば気分転換の兆候、あるいは慰藉の兆しともいうべきものになっている、もしくはなろうとしていることは間違いありません。

 制裁以降、この過去2年間の対立は、ロシア人の愛国心、愛国感情を高めただけではなく、実際にはロシア人の外に対する危惧の念も高めました。2016年の初秋には、ロシアの世論において、冷戦以来初めてアメリカとの戦争が起こるのではないか、ということを心配する人たちが出てきました。こうした中、トランプ氏の勝利は、少なくとも「もはや戦争はない」というサインとして感じられているということです。逆に中...
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