トランプ政権の中東政策
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トランプ大統領が認識する中東とは何か?
トランプ政権の中東政策(2)親イスラエルが招く混乱
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イラン核合意からの離脱を表明した米・トランプ大統領は、1週間後の2018年5月14日に在イスラエル大使館をエルサレムに移転開設した。これによりパレスチナ各地で抗議デモが発生、イスラエル治安部隊の発砲により死者は70人以上とも言われている。この日を選んだのはアメリカの挑発行為とも取れる、というのが歴史学者の山内昌之氏。その意味するところを解説いただこう。(第2話)
時間:11分17秒
収録日:2018年6月14日
追加日:2018年7月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●「イラン核合意離脱」後のトランプ氏の動きは?


 皆さん、こんにちは。前回はアメリカのドナルド・トランプ大統領がイラン核合意から離脱したお話をしました。イランの核開発を阻止し、核保有を延期させるために結ばれた包括的な合意を、アメリカが自ら破棄した顛末についてです。

 もちろんアメリカ側から見て、イランが核開発をして核保有国になっていく状態を好ましいと思っているわけではありません。ですから、核合意脱退宣言の後もトランプ大統領は「中東に平和をもたらす」という大義名分を振りかざし、アメリカが後押しするイスラエルと一緒になって、イランへの各種の制裁や干渉を仕掛けてくることは間違いありません。

 しかし、曲者であるトランプ大統領の場合、「中東に平和をもたらす」と言いながらも、イランに対してどのような形でその担保を保証するのか。その心づもりが見えてこないのが、不安材料になります。


●イスラエルがシリアに空爆をする理由


 アメリカの動きに対してイランが反発して、新しい火種が生まれ、強まっているのが、現在の中東の状況です。ここで留意しなくてはならないのは、イスラエルの存在です。

 イスラエルは、シリアの内戦プロセスにおいてはすこぶる慎重な態度を取り、できるだけ直接的な干渉を避けてきた経緯があります。しかし、現在の不穏危機を深めていく新しい要素として、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の動きがあることについて、少し触れてみたいと思います。

 イスラエルは、これまで大小合わせて200回以上の空爆を、シリアのヒズボラに対して行ってきました。ヒズボラはもともとレバノンで結成されたシーア派イスラム主義組織で、イスラムのジハードにつながる武装組織です。

 よく考えてみると、シリアのような独立した主権の国民国家の中に、平然として隣国レバノンの武装革命組織ヒズボラが存在し、あろうことかシリア内戦にまで関与しているのは、おかしな話です。

 しかし、おかしいといえば、イランの革命防衛隊、とりわけその中核を担うクドゥス軍団(クドゥスはエルサレムの意味)がシリアに入り込んでいることも解せません。また、ロシアのように海軍と空軍を中核とする正規軍の勢力が、公然とシリアのアサド政府軍を援助し、むしろその主体となってシリアで戦っている現状もあります。それらから見ると、少なくとも当人た...

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