トランプの中東戦略とその影響
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ大統領の中東政策のメタファー「ISRAEL」
トランプの中東戦略とその影響(1)解読の鍵は「ISRAEL」
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イラン核合意破棄、米大使館のエルサレム移転、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への支援停止。危うさを増すトランプ大統領の中東政策は、どこへ向かうのか? 歴史学者・山内昌之氏が、象徴的な頭文字「ISRAEL」に即して、トランプ氏の中東戦略と国際社会への影響を解説する。(全2話中第1話)
時間:11分50秒
収録日:2018年9月27日
追加日:2018年10月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ大統領の奇妙さ、中東で顕著に


 皆さん、こんにちは。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領の国連総会での演説や、安倍総理大臣との日米間の関税に関わる交渉や対談を通して、トランプ大統領の国際関係における立ち位置の不思議さ、奇妙さがますます浮かび上がってきています。北東アジアにおいて、北朝鮮の非核化を実現すること自体は間違ってはいないのですが、それと在韓米軍の撤退をリンクさせようとするような大胆なカードの切り方もトランプ大統領の特徴です。

 特にトランプ大統領の大胆さ、奇妙さは、中東において目立ちます。中東においては、同盟国であり、シリア問題においては最重要当事国となったイスラエルのために、アメリカ大使館のエルサレム移転を実現して、周辺のアラブ諸国はもとより、ヨーロッパ各国等の反発を買ったことは、記憶に新しいものです。前後してイラン核合意(包括的共同作業計画=JCPOA)を一方的に破棄したことも記憶に遠くありません。

 トランプ大統領は、パレスチナ自治政府とイスラエルの仲介者を自負してきた米歴代政権の姿勢を放棄し、安全保障面におけるイランの脅威を力で除去したがるイスラエルの構えを支持することを明白にした感があります。そして、パレスチナ自治区を支援してきた国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対するアメリカの拠出金を全面的にストップするといったような態度に出ています。

 こうしたトランプ大統領の姿勢は、いわゆるシオニストプロテスタンティズムともいうべき大統領の見解や信仰、あるいは娘のイバンカ・トランプ氏とその夫のジャレッド・クシュナー上級顧問がユダヤ教正統派に属するといった環境に左右されていることも、あながち間違いとは言えません。


●対イラン政策の不安定さ


 大統領の中東政策を形作る要素を簡潔にまとめようとすれば、中東政策の頭文字をメタファー(隠喩)として象徴的に並べて「ISRAEL」と見ることができます。今日は、単なる語呂合わせではなく、複数の言葉や概念を組み合わせて、私なりに「ISRAEL」という言葉に照合しながら、トランプ氏の政策が単なる思いつきや即興性ではなく、ある種の確信性に基づいていることを、皆さんと一緒に考えてみたい次第です。

 まず「I」は、イスラエルを意味すると同時にイランを意味します。トランプ大統領の安全保障担当補佐官であるジョン...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…秀吉に怒られなかったのは秀長と家康だけ
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(9)魂の三部分説
理性・気概・欲望…ポリスとの類比でわかる「魂の三部分説」
納富信留
日本の特性とは何か~「日本的」の本質(5)鋭い感性と深い精神性
本居宣長が説く「神信仰」…神道の本当の姿に迫る
田口佳史
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
健診結果から考える健康管理・新5カ条(2)健診結果はダルマ落としでアプローチ
バラバラ事件!? 検査項目をバラバラに見てはいけない
野口緑