安倍総理のイラン訪問を読む
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イランへの圧力はネタニヤフ首相への援護射撃だった
安倍総理のイラン訪問を読む(2)イランの代理人の動向
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
トランプ大統領は、ゴラン高原の占領地のイスラエル領有承認や、イラン革命防衛隊の「テロ組織指定」、イラン産原油禁輸の徹底など、歴代の米大統領が思いもよらない選択をしたが、これはイスラエルのネタニヤフ首相への「援護射撃」であった。これを受けて、イラン、そしてイランの代理人はどう動くか。(全3話中第2話)
時間:11分13秒
収録日:2019年6月10日
追加日:2019年7月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「攻撃的な封じ込め」を言及した意味


 皆さん、こんにちは。

 2019年3月にイスラーム国のいわゆるカリフ制国家が完全に敗北して、多くのイスラーム国の要員が降伏しました。これによって、中東の基本的な地政学的な構図が変化を遂げました。それを前提として、イランとアメリカとのあいだにある緊張が高まったということですが、もう一つ、イスラーム国の領土としての消滅、もしくは消去ということ以外に重要なのは、イスラエルの要素です。

 (2019年)3月26日に、イスラーム国の解体を受けて、トランプは、歴代のアメリカ合衆国大統領が思いもよらない選択をしました。それは、シリアの領土とされてきたゴラン高原の占領地をイスラエルが領有することを承認したことです。

 それに加えて、それから2週間ほどたって、4月8日、イラン革命防衛隊について、アメリカ合衆国は「テロ組織」だと指定したわけです。イラン革命防衛隊は、イランの国防軍とは異なるとはいえ、イランの正式な組織です。その内容、性格、あるいは行為がどのようなものであるかについては、人によって批判があり、シリアの内戦や内乱に大きく関与しているイラン革命防衛隊でありますが、ともかく国家の組織であります。それをテロ組織だと指定したのは、大変大きな一歩を踏み出したということです。

 しかし、この4月8日のアメリカの決断は、次の日に行なわれた、ある大きな行事に対する援護射撃でした。これは非常に情勢が不利だとされていた、4月9日のイスラエルの総選挙において、ネタニヤフ首相の与党が辛くも勝ったことです。まさに、「辛くも」でした。

 もちろん、単独多数は取れませんでしたから、ネタニヤフは右派と極右勢力の連立によって、5期目を続投すると見られていたのです。その基本的な成功は、トランプ大統領が保証したといえます。しかしながら、連立工作に今日に至るまで成功しておらず、再び2019年の夏以降、再選挙という事態を迎えているのはご案内のとおりです。

 もう一つ、こうしたイランに対するアメリカの攻勢があった一つの例は、2018年11月のイランの石油輸入の除外適用、すなわち7カ国1地域(中国、インド、トルコ、韓国、ギリシャ、イタリア、日本、台湾)のイランからの石油の輸入について、とりあえず除外適用をするといっていたもの、2019年5月2日以降撤廃すると表明したことです。すなわち5月2日以降...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(2)戦争省とチャーリー・カーク暗殺事件
チャーリー・カーク暗殺事件とは?その真相と政権への影響
東秀敏
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保