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ISの最終局面におけるアメリカの野心とロシアの警告

IS最終局面と中東情勢2019(1)ISの消滅とアメリカの思惑

山内昌之
東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授
概要・テキスト
ついに消滅か。イスラム国(IS)の勢力はますます劣化し、最終局面に入ったという。しかし、その背後にはトランプ大統領の野心がちらつく。そしてそれを警戒するロシア──。今シリア、そして中東に何が起こっているのか。(全2話中第1話)
時間:11:32
収録日:2019/02/20
追加日:2019/05/03
カテゴリー:
≪全文≫

●IS消滅に向け、アメリカの役割が寄与したことは間違いない


 皆さん、こんにちは。北東アジアにおいてもドナルド・トランプ大統領は、北朝鮮の非核化を目指して、主観的にはさまざまな形でアプローチと努力を続けています。また、目立たないことですが、中東においても、トランプ大統領はシリア問題に関して最終局面、すなわち、スンナ派過激派武装組織イスラム国(IS)の掃討、消滅に関して最終局面に入る上で、なかなかに重要な役割を果たしています。このシリアにおけるトランプ大統領ひいてはアメリカの役割は、あまり知られていません。今日はそうした点を中心にお話しします。

 かつてはシリアとイラクにまたがるシリア砂漠を中心に、シリア中部地域とイラク西部地域を事実上コントロール下に置いていたISも、次第に支配地域が狭まることになり、現在ではアル・バクマルというこの一角に押し込められるようになっています。もう少し大きな地図で拡大しますと、このアル・バクマルは、ちょうどイラクとシリアが接する国境の端にあたり(東側がイラク、西側がシリア)、ISはここまで押し込められています。

 さらに詳しくこの部分を拡大したのが左上のこの拡大部分です。アル・バクマルの中のバーグーズという地域に押し込められ、そこから四散しつつあるというのが最終段階におけるISの現在の現状です。したがって、トランプ大統領が、アメリカの力によってISが今や消滅しようとしているというのは、全くの真実でもありませんが、全くの虚偽というわけでもありません。そこにアメリカのいくつかの役割が寄与したことは間違いありません。

 地図にアメリカの旗が見えますが、黄色いゾーンはクルド人部隊がここまで支配していることを示しています。赤いゾーンはシリア政府、アサド大統領の部隊がシリアを再び回復しつつあるとシリア政府は言っているわけですが、一番大きな違いは、黄色い地域にクルド人たちが大きな勢力を広げているということです。そのクルド人を地上部隊として使用し、技術要員を派遣しかつ軍事顧問を送ったのはアメリカです。小さなものでありますが、ここにアメリカのプレゼンスがあるのはそうした意味です。


●アメリカ軍撤退後のシリアはどうなるのか、大きな問題として浮上


 ところが、トランプ大...
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