アメリカの役割の変化
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ大統領の一国主義を一概に批判できないわけ
アメリカの役割の変化(2)日本の新たな危機を迎えて
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
日韓関係により日本の危機は別次元に入ろうとしているが、その背景にあるアメリカはどのように役割が変化しているのか。山内昌之氏は、そうした変化の時代、日本は今までの経験則で乗り切ろうとするのではなく、新たな戦略と強い責任感で問題に正面から向き合う必要があると説く。(全2話中第2話)
時間:10分38秒
収録日:2019年1月24日
追加日:2019年3月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ大統領の一国主義を一概に批判できないわけ


 皆さん、こんにちは。

 前回は北東アジアから中東、ヨーロッパに広がる現代の危機という問題におけるアメリカのドナルド・トランプ大統領の役割について、ゲーリー・クーパーの『真昼の決闘』とのアナロジーで話す機会がありました。

 人間というのは非常に勝手なものです。トランプ大統領に対して普段かなり批判している人(私を含めて)も当然多いわけです。しかし、トランプ氏のアメリカファースト(アメリカ国民ファースト)自体は、一国平和主義といって良いものですが、その一国平和主義を是とする日本人が、トランプ氏のこの一国主義への回帰、あるいはモンロー主義、すなわち19世紀アメリカの孤立主義への回帰ということになると、それを批判する人々が海外で多いというのは、まことに不思議な現象です。

 つまり、アメリカという国について、何かをゲーリー・クーパー的に全て解決してくれると思っている。そして、自分たちは舞台の裏手や脇の方にいて、その結果を見ている。こうした見方は、ウクライナやシリアの情勢において、結局正面から遠慮会釈なく立ち向かってきたロシアの攻勢を受ける側になると、EUやアラブの国々はそれに対して向かい合うということはなく、結局行きつくところはトランプ大統領の姿勢に不平や不満を漏らす。このような有り様であったわけです。


●現実を直視せずアメリカの未介入に反発するのはお門違い


 韓国の今回の対応は確かに非理性的であり、かつ現実的にもあり得ないことを語っています。場合によっては、これはねつ造ではないかということさえ、考えられます。そのような問題について、日本と日本人は直視するよりも、まず日韓の友好が絶対的なものであるという「日韓友好絶対モード」ともいうべきスタンス(これを哲学的にいうならば、ある意味で「超現実的世界」と名付けることができると私は思いますが)、こういう超現実的な世界にひたる一部の日本人の中には、今度は「アメリカが助けてくれない。あるいはアメリカが調整に当たってくれない。日米安保条約はだから信用できない」というような反発をする人たちがいます。

 日米安保条約のそもそもの理念、目的、対象範囲と、この日韓の紛争というものをごちゃごちゃにしているという見方もこうして出てくるのですが、これはお門違いというものです。

...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治