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欧州の選挙に介入するロシアの強硬姿勢

知られざるロシアの情と理(5)欧米への介入強化

島田晴雄
公立大学法人首都大学東京 理事長
情報・テキスト
周辺諸国に軍事介入するロシアは、欧州と米国の大統領選挙への介入も取り沙汰されている。これに欧米はいかに対抗するのか。また、日本とロシアはどのように連携していくのか。公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が論じる。(全6話中第5話)
時間:11:08
収録日:2018/08/22
追加日:2018/11/04
≪全文≫

●シリア介入と米露の対立


 それからロシアがシリアに軍事介入しました。ロシアとシリアには大変長い付き合いがあります。ロシアから見ると、シリアは地中海に出る際の非常に貴重な出口になっています。

 バラク・オバマ大統領は当時、アサド政権がレッドラインを越えたという報告を受けたという話をしていました。レッドラインとは、越えてはならない一線を越えた、つまり人民にサリンのような化学兵器を使用したということです。これに関して、国連の調査でも写真がたくさん出て、それによって子どもたちが死んでいることが分かったため、オバマ大統領に報告がいったのです。彼は「レッドラインを越えたら許さない」と言っていたのですが、なんとシリアを攻撃するかどうか逡巡したのです。議会に、攻撃するかどうかを問うたのです。アメリカ大統領は議会の承認を得ないで2カ月間軍隊を動かせる権力を持っているのに逡巡したということです。これに関しては、世界中から「だらしない。平和主義かどうかは知らないが腰抜けの大統領だ」といわれています。

 一方、ウラジーミル・プーチン大統領はすかさず介入しました。自分が片付けるということで、指導力を発揮してアサド政権に化学兵器を収めるようにと言いました。その後、ISが出てきた時も、ISを建前にシリアに軍事介入を行いました。これに対しては、アメリカも軍事介入しましたが、ロシアとアメリカは全く逆で、ロシアはアサド政権を支持して、アメリカはアサド政権を攻撃しました。

 ドナルド・トランプ大統領は過激ですから、2017年4月に突然、アサド政権の基地にトマホーク59発を放って、攻撃しました。世界中が驚いたのですが、アメリカはやるときはやるということをトランプ大統領は示したということでしょうが、ロシアにとってはふざけんな、ということで、両国は対立しているのです。

 そういうアメリカに対して、ロシアは2016年のアメリカ大統領選挙の時、サイバー攻撃で関与したのではないかという疑いが持たれています。もしサイバー攻撃によってアメリカ大統領選挙を妨害したとなれば、アメリカの民主主義に対する重大な攻撃ですから、これは大変なことですが、それをトランプ大統領が手引きしたのではないかという疑いを持たれています。いわゆるロシア疑惑で、現在アメリカのロバート・ミュラー特別検察官の調査が進んでいるということです。

 あまり日本での報道には出てきませんが、今回ロシアでいろいろな話をして、なるほどと思ったことがあります。ロシアではプーチン大統領が2012年に首相から転じて大統領3期目をするという時に大きなデモが起きたのですが、これをヒラリー・クリントン氏は当然のことだと世界的に発言したのです。

 これに対してロシア側は、ヒラリー・クリントン氏が後ろで糸を引いたのではないかと見ているようです。ということで、ヒラリー氏だけは絶対に許しません。ですから、ヒラリー氏とトランプ氏が大統領選挙を行っている時に、ヒラリー氏を何としても落選させなくてはいけないということだったようです。ヒラリー氏でなければいいし、トランプ氏はどのみちディールばかり唱えている人で、利益取引型の人だから、場合によるとくみしやすいかもしれないということです。しかも、ロシアから見ると、トランプ陣営はみな素人です。マイケル・フリン補佐官もジャレッド・クシュナー氏もトランプ・ジュニア氏も素人ばかりですから、スパイ戦や謀略に関してはほとんどプロではないのです。ですからプーチン政権から見ると、トランプ側のそうした力はほとんど評価していないし、相手にもしていないというのが実情のようです。


●欧州の選挙に介入するロシアの強硬姿勢


 また、プーチン政権はどんどんと欧州の選挙に介入しているのではないかという疑いが出ています。それは、ロシアがEUの弱体化を画策しているからだということです。EUとNATOはかなり重なっており、反ロシア戦線である目の上のたんこぶのNATOを何とか排除したいのです。よって、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が2017年の5月に大統領選に出た時、散々ロシアから邪魔された経験があるといわれています。

 マクロン氏は2018年1月、メディアの偽のニュースから民主主義を守る、という法律、制度をフランスに導入すると表明しました。これにアメリカもイギリスも同調し、ロシアの情報工作対策に乗り出すといわれています。クレムリンには、国営の対外発信メディア、特に政治宣伝機関(プロパガンダ機関)として「RT」と「スプートニク」というものがあることがよく知られています。これは偽のニュースを流す専門集団だといわれています。ここにインタビューをすると、そんなことは全くしていないと言っているそうですが、そんなことが起きているというのは、ロシアがNATOに取り囲ま...
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