知られざるロシアの情と理
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
プーチンの安全保障と外交戦略の特徴
知られざるロシアの情と理(4)プーチン政権の外交戦略
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
プーチン政権の外交戦略を脅威と感じている人は多いかもしれない。だが、プーチン政権側からすれば、むしろロシアの方が西側諸国に侵食されている被害者なのだという。なぜ、ロシアと西側諸国とでは認識が全く異なるのか。公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が語る。(全6話中第4話)
時間:11分55秒
収録日:2018年8月22日
追加日:2018年11月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●プーチンの安全保障と外交戦略の特徴


 さて、皆さんと一緒に、次の大きなテーマである、ロシアの安全保障と外交戦略について考えてみたいと思います。

 この安全保障と外交戦略は世界中の注視の的になっています。なぜかというと、ウラジーミル・プーチン大統領の安全保障と外交戦略はこわもてというか、やや恐ろしいイメージが行き渡っているからです。これについて、西側諸国のイメージとプーチン政権の自己認識に非常に大きな乖離があることが特徴だと思います。ロシアに詳しい人たちは、そのことをよく知っていますが、私たちもそのことについて考えてみたいと思います。

 西側諸国から見るとプーチン政権の外交戦略は極めて攻撃的、侵略的、非民主主義的で、人権を無視してスパイ活動をどんどんやるように見えます。その脅威は深刻ですし、したがって当然、西側諸国はロシアを経済的にも軍事的にも制裁の対象にします。

 そもそも欧州にはNATO(North Atlantic Treaty Organization、北大西洋条約機構)があります。これは、冷戦時代にアメリカが主導してつくった国際的な軍事同盟で、旧ソ連の脅威に対抗するために旧ソ連を包囲する仕組みです。そんなものがあること自体、ロシアがいかに西側諸国から見ると脅威と認識されるかを示していると思います。

 ところが、プーチン政権の自己認識は全く異なります。むしろ正反対なのです。どのように見ているかというと、西側諸国の方が非常に脅威だというのです。政治的にも思想的にも脅威で、西側の悪い思想がロシアに入ってくることは、ロシアの国民の一体感を崩し、団結を崩すというのです。

 もっと恐ろしいことに、ロシアは昔、ソ連でしたが、ソ連はロシアの周りに14の民族共和国という国々を、いわばクッションとして持っていました。チェチェンやジョージア、ウズベキスタンやバルト3国などです。それらは、ソ連時代にはロシアのクッション地帯で、そこに14の共和国がありました。ロシアから見ると、いわば自分の裏庭のようなもので、そこに西側諸国がひそかに入ってきて荒らし回って侵食している。したがって、われわれが守らなくてはならない。そのためには強圧的で攻撃的な手段もやむを得ない。われわれは被害者だからだ。このような認識がロシアには非常に強いのです。

 フィナンシャルタイムズという新聞が、ある論説の中で次のようなことを大々...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏