知られざるロシアの情と理
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プーチンの安全保障と外交戦略の特徴
知られざるロシアの情と理(4)プーチン政権の外交戦略
政治と経済
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
プーチン政権の外交戦略を脅威と感じている人は多いかもしれない。だが、プーチン政権側からすれば、むしろロシアの方が西側諸国に侵食されている被害者なのだという。なぜ、ロシアと西側諸国とでは認識が全く異なるのか。公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が語る。(全6話中第4話)
時間:11分55秒
収録日:2018年8月22日
追加日:2018年11月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●プーチンの安全保障と外交戦略の特徴


 さて、皆さんと一緒に、次の大きなテーマである、ロシアの安全保障と外交戦略について考えてみたいと思います。

 この安全保障と外交戦略は世界中の注視の的になっています。なぜかというと、ウラジーミル・プーチン大統領の安全保障と外交戦略はこわもてというか、やや恐ろしいイメージが行き渡っているからです。これについて、西側諸国のイメージとプーチン政権の自己認識に非常に大きな乖離があることが特徴だと思います。ロシアに詳しい人たちは、そのことをよく知っていますが、私たちもそのことについて考えてみたいと思います。

 西側諸国から見るとプーチン政権の外交戦略は極めて攻撃的、侵略的、非民主主義的で、人権を無視してスパイ活動をどんどんやるように見えます。その脅威は深刻ですし、したがって当然、西側諸国はロシアを経済的にも軍事的にも制裁の対象にします。

 そもそも欧州にはNATO(North Atlantic Treaty Organization、北大西洋条約機構)があります。これは、冷戦時代にアメリカが主導してつくった国際的な軍事同盟で、旧ソ連の脅威に対抗するために旧ソ連を包囲する仕組みです。そんなものがあること自体、ロシアがいかに西側諸国から見ると脅威と認識されるかを示していると思います。

 ところが、プーチン政権の自己認識は全く異なります。むしろ正反対なのです。どのように見ているかというと、西側諸国の方が非常に脅威だというのです。政治的にも思想的にも脅威で、西側の悪い思想がロシアに入ってくることは、ロシアの国民の一体感を崩し、団結を崩すというのです。

 もっと恐ろしいことに、ロシアは昔、ソ連でしたが、ソ連はロシアの周りに14の民族共和国という国々を、いわばクッションとして持っていました。チェチェンやジョージア、ウズベキスタンやバルト3国などです。それらは、ソ連時代にはロシアのクッション地帯で、そこに14の共和国がありました。ロシアから見ると、いわば自分の裏庭のようなもので、そこに西側諸国がひそかに入ってきて荒らし回って侵食している。したがって、われわれが守らなくてはならない。そのためには強圧的で攻撃的な手段もやむを得ない。われわれは被害者だからだ。このような認識がロシアには非常に強いのです。

 フィナンシャルタイムズという新聞が、ある論説の中で次のようなことを大々...

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