知られざるロシアの情と理
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
北方領土問題は妥協せずに主張し続けるべき
知られざるロシアの情と理(6)北方領土問題を考える
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本とロシアは独特な北方領土問題を抱えている。第二次世界大戦後、当時ソ連だったロシアと日本は2国間で別途、平和条約締結を目指すということで、1955年に交渉を開始したが、いまだ決着がついていない。この問題について、公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が歴史的経緯をたどりながら解説する。(全6話中第6話)
時間:8分22秒
収録日:2018年8月22日
追加日:2018年11月5日
カテゴリー:
≪全文≫

●ロシアの地政学的な被害者意識


 さて、ここまで述べてきたことを踏まえて、そうした事実をどう判断するか、皆さんと一緒に考えましょう。

 西側諸国はその事実を踏まえて、「ロシアは民主主義を否定している。人権を否定している」と捉えているのですが、それはクリミアの問題でも分かるように国際法違反、つまり力による一方的な現状変更が1928年のパリ不戦条約への明確な違反だからです。したがって、西側諸国は、ロシアに対して経済制裁を当然するべきであるとして、実際に執行しています。

 ところが、ロシアは全く逆の判断です。西側諸国の方がロシアの周辺に介入をしてきて、それがひそかに浸透してきて、しかもロシアを侵食してくるということで、それに対する警戒感、恐怖感があるのです。そもそもNATOの軍事包囲網がロシアを取り囲んでいるので、それによってロシアは非常に脅かされています。つまり、ロシア独特の価値観、国家主義、一体感が侵食されており、それによって政権基盤が弱体化するというのです。

 実はロシアはこの地政学的な被害者意識をずっと持っているのです。地政学とは地理に関連しますが、ロシア周辺の地理を見るとすぐ分かります。ロシアの国境周辺には、高い山脈がないのです。コーカサスの方に行くとありますが、ロシア国境周辺にはありません。ですから、大軍がロシアに攻めようとすると、実はすぐできてしまうのです。

 歴史的にそれがありました。ナポレオンがそうです。たちどころにモスクワに迫りました。冬将軍が来なければ、ロシアはモスクワを奪われていたでしょう。ナチドイツ(ナチスドイツ)も迫りましたが、同じ冬将軍で解体しました。なんと日本がシベリアに進駐したこともあります。ですから、そのような恐怖感があるというのです。そのために14もの国を周辺にクッション地帯として置いて、そこが影響を受けると侵害、侵食しているというわけです。このことが分からないと、おそらく私たちはロシアのことが分からないと思います。そこのところを皆さんと一緒に考えたいと思います。


●北方領土問題の歴史的背景


 最後に、日本とロシアは独特な北方領土問題を抱えているので、このことについて少し言及したいと思います。

 第二次世界大戦後、当時のソ連はサンフランシスコ平和条約に調印しなかったのです。日本とソ連は2国間で別途、平和条約締結を目指す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新